真葛原


07643
煙もて空に占ふ何あらむ落ち葉を炊けば風が集まる
ケムリモテ ソラニウラナフ ナニアラム オチバヲタケバ カゼガアツマル

『短歌』(角川書店 1964.9) 第11巻9号 p.36


07644
闇を来て触るる道草漂へる魚のごとくに歩みてゐしや
ヤミヲキテ フルルミチクサ タダヨヘル ウオノゴトクニ アユミテヰシヤ

『短歌』(角川書店 1964.9) 第11巻9号 p.36


07645
真葛の葉茂れる沢をつたひゆきたづぬる死者はみな顔の無き
マクズノハ シゲレルサワヲ ツタヒユキ タヅヌルシシャハ ミナカオノナキ

『短歌』(角川書店 1964.9) 第11巻9号 p.36


07646
新しき白布机に掛けたれば生き残りゐるかなしみ深し
アタラシキ ハクフツクエニ カケタレバ イキノコリヰル カナシミフカシ

『短歌』(角川書店 1964.9) 第11巻9号 p.36


07647
遊牧の男一人わが夜々の夢に入り来て汗を匂はす
ユウボクノ オトコヒトリ ワガヨヨノ ユメニイリキテ アセヲニオハス

『短歌』(角川書店 1964.9) 第11巻9号 p.36