目次
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全短歌(歌集等)
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短歌
幾月かたつ
携ひて
痣として
われの死を
口が裂けても
階段を
接ぎ穂なき
ひとすぢの
夜のわれを
泡だてて
07771
携ひて在りにし日まで幾億光年の昔まで遠く引き戻されよ
タヅサヒテ アリニシヒマデ イクオクコウネンノ ムカシマデトオク ヒキモドサレヨ
『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.88
07772
痣として顔に残ると思ふまであかずなげきて幾月かたつ
アザトシテ カオニノコルト オモフマデ アカズナゲキテ イクツキカタツ
『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.88
07773
われの死を見ずにすみたる妹と繰り返し思ひなぐさまむとす
ワレノシヲ ミズニスミタル イモウトト クリカエシオモヒ ナグサマムトス
『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.88
07774
口が裂けても言へぬことあり思ひゐて髪のなかから汗ばみて来ぬ
クチガサケテモ イヘヌコトアリ オモヒヰテ カミノナカカラ アセバミテキヌ
『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.89
07775
階段を昇り来りてみづからの足音のふとさもしき日なり
カイダンヲ ノボリキタリテ ミヅカラノ アシオトノフト サモシキヒナリ
『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.89
07776
接ぎ穂なき思ひにをればゆるやかに輪を描きてあがる跳ね橋が見ゆ
ツギホナキ オモヒニヲレバ ユルヤカニ ワヲカキテアガル ハネハシガミユ
『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.89
07777
ひとすぢの曲線となる目の前にはげしくぶれてゐたるコードは
ヒトスヂノ キョクセントナル メノマエニ ハゲシクブレテ ヰタルコードハ
『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.89
07778
夜のわれをかこむ死者たち声たてず本のうしろのやうな背中よ
ヨノワレヲ カコムシシャタチ コエタテズ ホンノウシロノ ヤウナセナカヨ
『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.89
07779
泡だてて手を洗ふなり死者たちの夢ばかり見て眠らむ夜も
アワダテテ テヲアラフナリ シシャタチノ ユメバカリミテ ネムラムヨルモ
『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.89