目次
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全短歌(歌集等)
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短歌
花びらは湧け
玉虫を
ダンプカーの
橋の上に
花の名を
テーブルを
雨あとの
黒髪を
何により
人の体に
今はただ
07792
玉虫をあまた集めき玉虫をなべて逃がしきこの白き手に
タマムシヲ アマタアツメキ タマムシヲ ナベテニガシキ コノシロキテニ
『短歌』(角川書店 1974.8) 第21巻8号 p.98
07793
ダンプカーの砂利おろすさま音立ててあと戻りする時間の如き
ダンプカーノ ジャリオロスサマ オトタテテ アトモドリスル ジカンノゴトキ
『短歌』(角川書店 1974.8) 第21巻8号 p.98
07794
橋の上に立ちて淀みにふり撒かむ花びらは湧けわがもろ手より
ハシノウエニ タチテヨドミニ フリマカム ハナビラハワケ ワガモロテヨリ
『短歌』(角川書店 1974.8) 第21巻8号 p.98
07795
花の名を思へるひまに輪郭をくづして溶けてゆくシャーべット
ハナノナヲ オモヘルヒマニ リンカクヲ クヅシテトケテ ユクシャーベット
『短歌』(角川書店 1974.8) 第21巻8号 p.98
07796
テーブルをかこみて語りゐたりしが他人のやうにはわれを見ざりき
テーブルヲ カコミテカタリ ヰタリシガ タニンノヤウニハ ワレヲミザリキ
『短歌』(角川書店 1974.8) 第21巻8号 p.98
07797
雨あとのしづくの音を集めゐて何を聴きたき耳かと思ふ
アメアトノ シヅクノオトヲ アツメヰテ ナニヲキキタキ ミミカトオモフ
『短歌』(角川書店 1974.8) 第21巻8号 p.98
07798
黒髪を燃えあがらせてやみくもに駆けりゆきたり目ざめしあとも
クロカミヲ モエアガラセテ ヤミクモニ カケリユキタリ メザメシアトモ
『短歌』(角川書店 1974.8) 第21巻8号 p.98
07799
何によりをみな子などに生れしや耳に涙をためつつ眠る
ナニニヨリ ヲミナコナドニ ウマレシヤ ミミニナミダヲ タメツツネムル
『短歌』(角川書店 1974.8) 第21巻8号 p.98
07800
人の体に等高線をゑがける図見て立ちくれば身がやはらかし
ヒトノカラダニ トウコウセンヲ ヱガケルズ ミテタチクレバ ミガヤハラカシ
『短歌』(角川書店 1974.8) 第21巻8号 p.98
07801
今はただミシンを踏まむ石ころのやうにころがり落ちてもゆけず
イマハタダ ミシンヲフマム イシコロノ ヤウニコロガリ オチテモユケズ
『短歌』(角川書店 1974.8) 第21巻8号 p.98