人形の靴


07899
背信に紙一重なる思ひして見返るビルはかすか茜す
ハイシンニ カミヒトエナル オモヒシテ ミカエルビルハ カスカアカネス

『短歌』(角川書店 1977.1) 第24巻1号 p.84


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どこまでも犬として野を遠ざかる日ぐれはさびしむらがるものも
ドコマデモ イヌトシテノヲ トオザカル ヒグレハサビシ ムラガルモノモ

『短歌』(角川書店 1977.1) 第24巻1号 p.84


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矢印の方へは行かず帰り来ぬつぼみの薔薇を買ひたるのみに
ヤジルシノ ホウヘハユカズ カエリキヌ ツボミノバラヲ カヒタルノミニ

『短歌』(角川書店 1977.1) 第24巻1号 p.84


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少女らの覗きて過ぎし飾り窓人形はピンクのトー・シューズ履く
ショウジョラノ ノゾキテスギシ カザリマド ニンギョウハピンクノ トー・シューズハク

『短歌』(角川書店 1977.1) 第24巻1号 p.84


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引力のやさしき日なり黒土に輪をひろげゆく銀杏の落ち葉
インリョクノ ヤサシキヒナリ クロツチニ ワヲヒロゲユク イチョウノオチバ

『短歌』(角川書店 1977.1) 第24巻1号 p.85


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人の名を呼ぶアナウンス間をおきてくり返されぬ霧の操車場に
ヒトノナヲ ヨブアナウンス マヲオキテ クリカエサレヌ キリノヤードニ

『短歌』(角川書店 1977.1) 第24巻1号 p.85


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コンテナの雪にまみれて停りゐきわれはわが持つものを恐れき
コンテナノ ユキニマミレテ トマリヰキ ワレハワガモツ モノヲオソレキ

『短歌』(角川書店 1977.1) 第24巻1号 p.85


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破滅型のもう一人のわれがひろげたる翼の隙を突かるる勿れ
ハメツガタノ モウヒトリノワレガ ヒロゲタル ツバサノスキヲ ツカルルナカレ

『短歌』(角川書店 1977.1) 第24巻1号 p.85


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映像はかくまざまざと見取り図にむくろのありし位置を伝ふる
エイゾウハ カクマザマザト ミトリズニ ムクロノアリシ イチヲツタフル

『短歌』(角川書店 1977.1) 第24巻1号 p.85


07908
散りそめし薔薇のたちまち散りつくすかかる速度にも堪へねばならず
チリソメシ バラノタチマチ チリツクス カカルソクドニモ タヘネバナラズ

『短歌』(角川書店 1977.1) 第24巻1号 p.85


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ロジェ・ガレの香水といへり部屋中に撒きて無頼の一日も終る
ロジェ・ガレノ コウスイトイヘリ ヘヤヂュウニ マキテブライノ イチニチモオワル

『短歌』(角川書店 1977.1) 第24巻1号 p.85