機銃音


08060
ひとりなす夕餉もつねのことにして古りしヒーターの螺旋がともる
ヒトリナス ユウゲモツネノ コトニシテ フリシヒーターノ ラセンガトモル

『短歌』(角川書店 1978.9) 第25巻9号 p.35


08061
切り捨ててしまふ葉先もわが持たずまっすぐ青しかぶらの茎は
キリステテ シマフハサキモ ワガモタズ マッスグアオシ カブラノクキハ

『短歌』(角川書店 1978.9) 第25巻9号 p.35


08062
バングラディシュに生れなばとうに餓死しゐむと読めりひとりのさだめなき日に
バングラディシュニ ウマレナバトウニ ガシシヰムト ヨメリヒトリノ サダメナキヒニ

『短歌』(角川書店 1978.9) 第25巻9号 p.35


08063
電気ドリルがビルを穿ちてゐる音の俄かに近し背中が熱し
デンキドリルガ ビルヲウガチテ ヰルオトノ ニワカニチカシ セナカガアツシ

『短歌』(角川書店 1978.9) 第25巻9号 p.35


08064
ぎざぎざの岩のつづきを越え来しが遠のきて山の形ととのふ
ギザギザノ イワノツヅキヲ コエコシガ トオノキテヤマノ カタチトトノフ

『短歌』(角川書店 1978.9) 第25巻9号 p.35