目次
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全短歌(歌集等)
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短歌
軍手
音のして
見しことも
疑はず
乱れずに
ニュース待ちて
天安門
青墨を
十年は
いち早く
あをあをと
雪国に
二十代の
どの家の
さまざまに
08408
音のして皿にこぼれて昔々ルビーのやうなドロップありき
オトノシテ サラニコボレテ ムカシムカシ ルビーノヤウナ ドロップアリキ
『短歌』(角川書店 1990.2) 第37巻2号 p.24
08409
見しこともなきまさかりを知りてをり童話の挿絵に大きかりけり
ミシコトモ ナキマサカリヲ シリテヲリ ドウワノサシエニ オオキカリケリ
『短歌』(角川書店 1990.2) 第37巻2号 p.24
08410
疑はず軍手と呼びて使ひ来ぬ今もそのまま洗へば白し
ウタガハズ グンテトヨビテ ツカヒキヌ イマモソノママ アラヘバシロシ
『短歌』(角川書店 1990.2) 第37巻2号 p.25
08411
乱れずに筋をはこびて人は言ひ蚕豆の花あまた咲きゐき
ミダレズニ スジヲハコビテ ヒトハイヒ ソラマメノハナ アマタサキヰキ
『短歌』(角川書店 1990.2) 第37巻2号 p.25
08412
ニュース待ちてかけおくテレビに男性がタルタルソースの作法を教ふ
ニュースマチテ カケオクテレビニ ダンセイガ タルタルソースノ サホウヲオシフ
『短歌』(角川書店 1990.2) 第37巻2号 p.25
08413
天安門広場の略図切り抜きて挟みありしが辞書よりこぼる
テンアンモン ヒロバノリャクズ キリヌキテ ハサミアリシガ ジショヨリコボル
『短歌』(角川書店 1990.2) 第37巻2号 p.25
08414
青墨を磨るときの香に匂ひたりカーネーションの束をほどけば
アオスミヲ スルトキノカニ ニオヒタリ カーネーションノ タバヲホドケバ
『短歌』(角川書店 1990.2) 第37巻2号 p.26
08415
十年は経しと思へど取り出でてムートンに残るけものの臭ひ
ジュウネンハ ヘシトオモヘド トリイデテ ムートンニノコル ケモノノニオヒ
『短歌』(角川書店 1990.2) 第37巻2号 p.26
08416
いち早くビルに昏みて白猫の渡りゐるさへ不似合ひの街
イチハヤク ビルニクラミテ シロネコノ ワタリヰルサヘ フニアヒノマチ
『短歌』(角川書店 1990.2) 第37巻2号 p.26
08417
あをあをと茹でし春菊を賜ひたり木枯らしすさぶ巷より来て
アヲアヲト ユデシシュンギクヲ タマヒタリ コガラシスサブ チマタヨリキテ
『短歌』(角川書店 1990.2) 第37巻2号 p.26
08418
雪国に在りて恋ひにしカンボジアのアンコールワットも傷めりといふ
ユキグニニ アリテコヒニシ カンボジアノ アンコールワットモ イタメリトイフ
『短歌』(角川書店 1990.2) 第37巻2号 p.27
08419
二十代の後半にして台風の目のしづけさといふを知りにき
ニジュウダイノ コウハンニシテ タイフウノ メノシヅケサト イフヲシリニキ
『短歌』(角川書店 1990.2) 第37巻2号 p.27
08420
どの家の犬も啼かずて午前二時団地二百戸しづまりかへる
ドノイエノ イヌモナカズテ ゴゼンニジ ダンチニヒャクコ シヅマリカヘル
『短歌』(角川書店 1990.2) 第37巻2号 p.27
08421
さまざまに迷ひたれども光源を遠ざけてゆくごとく眠りぬ
サマザマニ マヨヒタレドモ コウゲンヲ トオザケテユク ゴトクネムリヌ
『短歌』(角川書店 1990.2) 第37巻2号 p.27