牧歌


08436
牧草も雨に育つと告げくれば牛の匂ひのふと立つ如し
ボクソウモ アメニソダツト ツゲクレバ ウシノニオヒノ フトタツゴトシ

『短歌』(角川書店 1991.10) 第38巻10号 p.103


08437
クローバーの丘に少女は連れゆきて犬にも首輪を編みやりしとぞ
クローバーノ オカニショウジョハ ツレユキテ イヌニモクビワヲ アミヤリシトゾ

『短歌』(角川書店 1991.10) 第38巻10号 p.103


08438
うしろより花の香のする風が来て返り咲きせる黄の薔薇に逢ふ
ウシロヨリ ハナノカノスル カゼガキテ カエリザキセル キノバラニアフ

『短歌』(角川書店 1991.10) 第38巻10号 p.103


08439
軍用馬にとられむ憂ひも今は無く姿やさしきジョッキーが乗る
グンヨウバニ トラレムウレヒモ イマハナク スガタヤサシキ ジョッキーガノル

『短歌』(角川書店 1991.10) 第38巻10号 p.103


08440
デパートの窓のカクテル光線にいたく華やぐ硝子の鹿は
デパートノ マドノカクテル コウセンニ イタクハナヤグ ガラスノシカハ

『短歌』(角川書店 1991.10) 第38巻10号 p.103


08441
帆柱が音なくあまた立ちゐたり葉山マリーナ月の夜更けに
ホバシラガ オトナクアマタ タチヰタリ ハヤママリーナ ツキノヨフケニ

『短歌』(角川書店 1991.10) 第38巻10号 p.103


08442
梅雨寒むのひと日ふた日と続きゐて行かねばならぬ法会近づく
ツユザムノ ヒトヒフタヒト ツヅキヰテ ユカネバナラヌ ホウエチスヅク

『短歌』(角川書店 1991.10) 第38巻10号 p.103