目次
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全短歌(歌集等)
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短歌
じやがたらぶみ
縫ひ針を
つながりて
くくと啼き
渋滞の
女装かと
会はぬまま
煩悩の
みどりごは
耳悪しき
思ふさま
貴石とも
戦にて
七草の
おほかたを
08443
縫ひ針を撒きたるごとく光りつつ消えつつ稚魚は水にちらばる
ヌヒバリヲ マキタルゴトク ヒカリツツ キエツツチギョハ ミズニチラバル
『短歌』(角川書店 1992.2) 第39巻2号 p.18
08444
つながりて咲く曼珠沙華はればれともう一本が離れて咲けり
ツナガリテ サクマンジュシャゲ ハレバレト モウイッポンガ ハナレテサケリ
『短歌』(角川書店 1992.2) 第39巻2号 p.18
08445
くくと啼き岸に寄りくる一列に混じりてあらばわれはどの鴨
ククトナキ キシニヨリクル イチレツニ マジリテアラバ ワレハドノカモ
『短歌』(角川書店 1992.2) 第39巻2号 p.19
08446
渋滞の車のほとり温室の曇りのなかに人かげ動く
ジュウタイノ クルマノホトリ オンシツノ クモリノナカニ ヒトカゲウゴク
『短歌』(角川書店 1992.2) 第39巻2号 p.19
08447
女装かと思ひたれども金の環のピアスしてゐる耳が小さし
ジョソウカト オモヒタレドモ キンノワノ ピアスシテヰル ミミガチイサシ
『短歌』(角川書店 1992.2) 第39巻2号 p.19
08448
会はぬまま四十年かデモのあと流れ解散して別れにし
アハヌママ ヨンジュウネンカ デモノアト ナガレカイサン シテワカレニシ
『短歌』(角川書店 1992.2) 第39巻2号 p.19
08449
煩悩の一つのごとし吊るされし塩鮭の絵を目が覚えゐて
ボンノウノ ヒトツノゴトシ ツルサレシ シオザケノエヲ メガオボエヰテ
『短歌』(角川書店 1992.2) 第39巻2号 p.20
08450
みどりごは見えぬもの見て泣くといふ噴水の秀に冬の日が差す
ミドリゴハ ミエヌモノミテ ナクトイフ フンスイノホニ フユノヒガサス
『短歌』(角川書店 1992.2) 第39巻2号 p.20
08451
耳悪しき少女と犬も気付きしか吠ゆるをやめて撫でられてゐる
ミミアシキ ショウジョトイヌモ キヅキシカ ホユルヲヤメテ ナデラレテヰル
『短歌』(角川書店 1992.2) 第39巻2号 p.20
08452
思ふさまあばれてゐたる旗すすき一幅の絵に戻りてそよぐ
オモフサマ アバレテヰタル ハタススキ イップクノエニ モドリテソヨグ
『短歌』(角川書店 1992.2) 第39巻2号 p.20
08453
貴石とも葱の種子とも知れねどもひとつぶひとつぶ土に埋めをり
キセキトモ ネギノシュシトモ シレネドモ ヒトツブヒトツブ ツチニウメヲリ
『短歌』(角川書店 1992.2) 第39巻2号 p.21
08454
戦にて中止となりし年ありき若草山をこよひ燃すとぞ
イクサニテ チュウシトナリシ トシアリキ ワカクサヤマヲ コヨヒモストゾ
『短歌』(角川書店 1992.2) 第39巻2号 p.21
08455
七草の三草ばかりの粥といふ雪のカナダに人は住みゐて
ナナクサノ ミクサバカリノ カユトイフ ユキノカナダニ ヒトハスミヰテ
『短歌』(角川書店 1992.2) 第39巻2号 p.21
08456
おほかたを渡り終へたるわがひと世じやがたらぶみは書かなくて済む
オホカタヲ ワタリオヘタル ワガヒトヨ ジヤガタラブミハ カカナクテスム
『短歌』(角川書店 1992.2) 第39巻2号 p.21