目次
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全短歌(歌集等)
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短歌
かたくりの花
その道を
日を選ぶ
大時計は
かそかなる
十人の
ぎざぎざの
仮面つけて
煮立ちたる
仙台の
三たび来て
たれかれの
内臓を
中型の
釘の長さに
08457
その道をまつすぐと電話に告げてよりぐんぐん近づく白の車体は
ソノミチヲ マツスグトデンワニ ツゲテヨリ グングンチカヅク シロノシャタイハ
『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.70
08458
日を選ぶ習ひのわれに残りゐて古き傘のままマートまで行く
ヒヲエラブ ナラヒノワレニ ノコリヰテ フルキカサノママ マートマデユク
『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.70
08459
大時計はいづこも正午をさすならむ人まばらなる広場もあらむ
オオドケイハ イヅコモショウゴヲ サスナラム ヒトマバラナル ヒロバモアラム
『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.71
08460
かそかなる収入のありて片栗の花をゑがかむ絵の具買ふとぞ
カソカナル ミイリノアリテ カタクリノ ハナヲヱガカム エノグカフトゾ
『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.71
08461
十人の子供預かり賑はへり間口の狭きビルの二階は
ジュウニンノ コドモアズカリ ニギハヘリ マグチノセマキ ビルノニカイハ
『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.71
08462
ぎざぎざの紙の王冠かぶりたる小さき王さまたちまちころぶ
ギザギザノ カミノオウカン カブリタル チイサキオウサマ タチマチコロブ
『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.71
08463
仮面つけて鬼になりし子鬼のまま帰りてはならず祖母待つ家へ
カメンツケテ オニニナリシコ オニノママ カエリテハナラズ ソボマツイエヘ
『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.72
08464
煮立ちたる湯沸かしポットのカルキ抜くボタンを押して待つに間のあり
ニタチタル ユワカシポットノ カルキヌク ボタンヲオシテ マツニマノアリ
『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.72
08465
仙台の駄菓子いただくティータイム時計まはりに箱を回しぬ
センダイノ ダガシイタダク ティータイム トケイマハリニ ハコヲマワシヌ
『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.72
08466
三たび来てまた迷へるに理容室のサインポールが不意に目の前
ミタビキテ マタマヨヘルニ リヨウシツノ サインポールガ フイニメノマエ
『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.72
08467
たれかれの手を借りて昇る階段にあたたかき手と今宵も言はる
タレカレノ テヲカリテノボル カイダンニ アタタカキテト コヨイモイハル
『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.73
08468
内臓を病むことのなき軽さよとアンティークドール棚に戻しぬ
ナイゾウヲ ヤムコトノナキ カルサヨト アンティークドール タナニモドシヌ
『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.73
08469
中型の犬張子もて遊びしは幾百年も昔のごとし
チュウガタノ イヌハリコモテ アソビシハ イクヒャクネンモ ムカシノゴトシ
『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.73
08470
釘の長さに区分されたる釘箱のいつよりかありいつまでかある
クギノナガサニ クワケサレタル クギバコノ イツヨリカアリ イツマデカアル
『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.73