交差点


08501
小春日といふはかかる日千代紙の紫のいろにサフランの咲く
コハルビト イフハカカルヒ チヨガミノ ムラサキノイロニ サフランノサク

『短歌現代』(短歌新聞社 1979.1) 第3巻1号 p.36


08502
誇張して言ひ来しことの傷なすをわが手美し家ごもる日は
コチョウシテ イヒコシコトノ キズナスヲ ワガテウツクシ イエゴモルヒハ

『短歌現代』(短歌新聞社 1979.1) 第3巻1号 p.36


08503
幾日か炊がず過ぎて包丁の光れるに会ふ夜半の厨に
イクニチカ カシガズスギテ ホウチョウノ ヒカレルニアフ ヨワノクリヤニ

『短歌現代』(短歌新聞社 1979.1) 第3巻1号 p.36


08504
姑と呼ぶ人のゐき風に鳴る唐もろこしは丈高かりき
シュウトメト ヨブヒトノヰキ カゼニナル トウモロコシハ タケタカカリキ

『短歌現代』(短歌新聞社 1979.1) 第3巻1号 p.37


08505
スクランブル交差点といへり四方よりけだものなして車押し寄す
スクランブル コウサテントイヘリ シホウヨリ ケダモノナシテ クルマオシヨス

『短歌現代』(短歌新聞社 1979.1) 第3巻1号 p.37


08506
飴いろのコーヒーシュガー足し入れて既に埋め得ぬ時差の如しも
アメイロノ コーヒーシュガー タシイレテ スデニウメエヌ ジサノゴトシモ

『短歌現代』(短歌新聞社 1979.1) 第3巻1号 p.37


08507
とがりたる顔を向けあふ夢のなか果実の山の不意に崩れき
トガリタル カオヲムケアフ ユメノナカ カジツノヤマノ フイニクズレキ

『短歌現代』(短歌新聞社 1979.1) 第3巻1号 p.37


08508
手を挙げて停る車のあることを僥倖とせし若き日も過ぐ
テヲアゲテ トマルクルマノ アルコトヲ ギョウコウトセシ ワカキヒモスグ

『短歌現代』(短歌新聞社 1979.1) 第3巻1号 p.37


08509
わかち持つ隠しごとさへはろけきに若草山を燃す日近づく
ワカチモツ カクシゴトサヘ ハロケキニ ワカクサヤマヲ モスヒチカヅク

『短歌現代』(短歌新聞社 1979.1) 第3巻1号 p.37


08510
物体の重さとなりて運ばるる日もあらむ身を横たへ眠る
ブッタイノ オモサトナリテ ハコバルル ヒモアラムミヲ ヨコタヘネムル

『短歌現代』(短歌新聞社 1979.1) 第3巻1号 p.37