迷はずに落つ


08747
集まりて降るにもあらぬ梅雨の雨ひとすぢひとすぢ迷はずに落つ
アツマリテ フルニモアラヌ ツユノアメ ヒトスヂヒトスヂ マヨハズニオツ

『短歌往来』(ながらみ書房 1989.7) 第1巻2号 p.18


08748
アイリスを活け替へをれば賜はりしいとまと思ふまでに癒えきぬ
アイリスヲ イケカヘヲレバ タマハリシ イトマトオモフ マデニイエキヌ

『短歌往来』(ながらみ書房 1989.7) 第1巻2号 p.18


08749
読みさしを机に伏せて出で来しが迎への舟の待つにもあらぬ
ヨミサシヲ ツクエニフセテ イデコシガ ムカヘノフネノ マツニモアラヌ

『短歌往来』(ながらみ書房 1989.7) 第1巻2号 p.18


08750
路面よりやや浮き立ちて夏草の短き橋はかかりゐにけり
ロメンヨリ ヤヤウキタチテ ナツクサノ ミジカキハシハ カカリヰニケリ

『短歌往来』(ながらみ書房 1989.7) 第1巻2号 p.18


08751
品触れの珊瑚の如くかがよひて尾を垂らしゐるかんざし一つ
シナブレノ サンゴノゴトク カガヨヒテ オヲタラシヰル カンザシヒトツ

『短歌往来』(ながらみ書房 1989.7) 第1巻2号 p.18


08752
簪の占ひといふがありにしがなにゆゑ偶数を凶としにけむ
カンザシノ ウラナヒトイフガ アリニシガ ナニユヱグウスウヲ キョウトシニケム

『短歌往来』(ながらみ書房 1989.7) 第1巻2号 p.18


08753
夜の道に投げ出されたる洋傘に降りゐし雪は今も目に見ゆ
ヨノミチニ ナゲダサレタル カウモリニ フリヰシユキハ イマモメニミユ

『短歌往来』(ながらみ書房 1989.7) 第1巻2号 p.18