ほくろの一つ


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夢見たるのちのさびしさかきまぜて鶏卵一つ黄に濁しゆく
ユメミタル ノチノサビシサ カキマゼテ ケイランヒトツ キニニゴシユク

『短歌新聞』(短歌新聞社 1973.8.10) p.6


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われに似る少女など世にゐてはならず眉をゑがきてゐる時思ふ
ワレニニル ショウジョナドヨニ ヰテハナラズ マユヲヱガキテ ヰルトキオモフ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1973.8.10) p.6


08822
刻限となれば出でゆく口もとにほくろの一つ描くこともなし
コクゲント ナレバイデユク クチモトニ ホクロノヒトツ カクコトモナシ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1973.8.10) p.6


08823
卓上の薔薇にあつめてゐし思ひ議事のなかばより乱されはじむ
タクジョウノ バラニアツメテ ヰシオモヒ ギジノナカバヨリ ミダサレハジム

『短歌新聞』(短歌新聞社 1973.8.10) p.6


08824
身の証し立つと思はずてのひらはわけの分からぬかたちにひらく
ミノアカシ タツトオモハズ テノヒラハ ワケノワカラヌ カタチニヒラク

『短歌新聞』(短歌新聞社 1973.8.10) p.6