今年の百舌


08912
樟脳の匂ふモヘアに襟埋めて今年の百舌に鳴かれつつ出づ
ショウノウノ ニオフモヘアニ エリウメテ コトシノモズニ ナカレツツイヅ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1987.1.10) p.11


08913
バス停のほとりの畑葉先みな鋭角に折れて立つ冬の葱
バステイノ ホトリノハタケ ハサキミナ エイカクニオレテ タツフユノネギ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1987.1.10) p.11


08914
地下道の地を這ふ風に紙が舞ひ舞ひ出づるものを身に持つごとし
チカドウノ チヲハフカゼニ カミガマヒ マヒイヅルモノヲ ミニモツゴトシ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1987.1.10) p.11


08915
つはぶきの花びら欠けて咲く見ればもう一つ咲く低く小さく
ツハブキノ ハナビラカケテ サクミレバ モウヒトツサク ヒククチイサク

『短歌新聞』(短歌新聞社 1987.1.10) p.11


08916
フォッサ・マグナを遠く住みゐる僥倖に思ひ至りて今日のしづけさ
フォッサ・マグナヲ トオクスミヰル ギョウコウニ オモヒイタリテ キョウノシヅケサ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1987.1.10) p.11