ギヤマンの花


08953
心か何かのやうに吹かれてどこまでもころがる落ち葉とどまる落ち葉
ココロカナニカノ ヤウニフカレテ ドコマデモ コロガルオチバ トドマルオチバ

『短歌公論』(短歌公論社 1972.1.1) 42号 p.1


08954
耳ばかり鋭くなりてアカシアのうつろの莢の鳴る夜を行けり
ミミバカリ スルドクナリテ アカシアノ ウツロノサヤノ ナルヨヲユケリ

『短歌公論』(短歌公論社 1972.1.1) 42号 p.1


08955
ゆくりなく窓に映りてわが見しはみづからの持つ行きづりの顔
ユクリナク マドニウツリテ ワガミシハ ミヅカラノモツ ユキヅリノカオ

『短歌公論』(短歌公論社 1972.1.1) 42号 p.1


08956
ここにゐる限りは見えて足折れてガラスの鹿のふたたび立たず
ココニヰル カギリハミエテ アシオレテ ガラスノシカノ フタタビタタズ

『短歌公論』(短歌公論社 1972.1.1) 42号 p.1


08957
ものを食む現し身の不意に生臭し灯ともりて咲くギヤマンの花
モノヲハム ウツシミノフイニ ナマグサシ ヒトモリテサク ギヤマンノハナ

『短歌公論』(短歌公論社 1972.1.1) 42号 p.1