夏の落ち葉


08963
何に触るるか不吉なこの手マニキユアの乾くまで見て手袋を嵌む
ナニニフルルカ フキツナコノテ マニキユアノ カワクマデミテ テブクロヲハム

『短歌公論』(短歌公論社 1975.8.1) 84号 p.2


08964
水の音に消されて何も言へざりき言へざりしこともよろこびに似る
ミズノオトニ ケサレテナニモ イヘザリキ イヘザリシコトモ ヨロコビニニル

『短歌公論』(短歌公論社 1975.8.1) 84号 p.2


08965
荷の幾つ殖やししのみに帰り来ぬ夏の落ち葉のまばらを踏みて
ニノイクツ フヤシシノミニ カエリキヌ ナツノオチバノ マバラヲフミテ

『短歌公論』(短歌公論社 1975.8.1) 84号 p.2


08966
降り出づるまた雨の音時かけて髪梳くことも濃き思ひゆゑ
フリイヅル マタアメノオト トキカケテ カミスクコトモ コキオモヒユヱ

『短歌公論』(短歌公論社 1975.8.1) 84号 p.2


08967
星屑のただ湧くばかり目を閉ぢて作れる闇を押しひろげつつ
ホシクズノ タダワクバカリ メヲトヂテ ツクレルヤミヲ オシヒロゲツツ

『短歌公論』(短歌公論社 1975.8.1) 84号 p.2