春の雪


08968
茶の湯など習ひて若き日のありきグラスの縁の口紅を拭く
チャノユナド ナラヒテワカキ ヒノアリキ グラスノフチノ クチベニヲフク

『短歌公論』(短歌公論社 1977.1.1) 101号 p.


08969
一枚一枚瓦を屋根に置く仕事窓をしめても音のきこゆる
イチマイイチマイ カワラヲヤネニ オクシゴト マドヲシメテモ オトノキコユル

『短歌公論』(短歌公論社 1977.1.1) 101号 p.


08970
夢にさへ何か足りない思ひしてスフレ乗せゐきケーキの皿に
ユメニサヘ ナニカタリナイ オモヒシテ スフレノセヰキ ケーキノサラニ

『短歌公論』(短歌公論社 1977.1.1) 101号 p.


08971
アスワン・ダムの貯水量など忽ちに忘るるものをなぜ忘れ得ぬ
アスワン・ダムノ チョスイリョウナド タチマチニ ワスルルモノヲ ナゼワスレエヌ

『短歌公論』(短歌公論社 1977.1.1) 101号 p.


08972
妹の分も生きよと言はれしが墓碑を埋めて春の雪降る
イモウトノ ブンモイキヨト イハレシガ ボヒヲウズメテ ハルノユキフル

『短歌公論』(短歌公論社 1977.1.1) 101号 p.