鹿島灘某日


09031
満ち潮とならむ気配に波だてば椰子の実一つ流れ着かずや
ミチシオト ナラムケハイニ ナミダテバ ヤシノミヒトツ ナガレツカズヤ

『毎日新聞』(毎日新聞社 1989.6.17) p.13


09032
車ごと待たされをれば押し寄する波はしばしば突堤を越ゆ
クルマゴト マタサレヲレバ オシヨスル ナミハシバシバ トッテイヲコユ

『毎日新聞』(毎日新聞社 1989.6.17) p.13


09033
飛ぶことのなき白鳥を見てゐたり日傘に右の肩を入れつつ
トブコトノ ナキハクチョウヲ ミテヰタリ ヒガサニミギノ カタヲイレツツ

『毎日新聞』(毎日新聞社 1989.6.17) p.13


09034
キリシタンの大名ありき帆船の大き模型を見てゐて思ふ
キリシタンノ ダイミョウアリキ ハンセンノ オオキモケイヲ ミテヰテオモフ

『毎日新聞』(毎日新聞社 1989.6.17) p.13


09035
夕まけて帰り来つればあぢさゐの花芽つぶつぶ雨に打たるる
ユウマケテ カエリキツレバ アヂサヰノ ハナメツブツブ アメニウタルル

『毎日新聞』(毎日新聞社 1989.6.17) p.13