無題


09036
突き刺さるパワーシャベルを見て過ぎぬ掬はるるもよし土くれとして
ツキササル パワーシャベルヲ ミテスギヌ スクハルルモヨシ ツチクレトシテ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1976.1.10) p.13


09037
日のくれに帰れる犬の身顫ひて遠き沙漠の砂まき散らす
ヒノクレニ カエレルイヌノ ミブルヒテ トオキサバクノ スナマキチラス

『短歌新聞』(短歌新聞社 1969.12.10) 195号 p.3


09038
押すこともあらず押されて歩む身をわれと笑ひて改札を出づ
オスコトモ アラズオサレテ アユムミヲ ワレトワラヒテ カイサツヲイヅ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1970.5.10) 199号 p.4


09039
遠き夜の記憶のなかに立ちそそる照明弾の下の樫の木
トオキヨノ キオクノナカニ タチソソル ショウメイダンノ モトノカシノキ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1972.1.10) 219号 p.


09040
知る筈のなき人ながら指先を脂いろに染めて死すと伝ふる
シルハズノ ナキヒトナガラ ユビサキヲ ヤニイロニソメテ シストツタフル

『短歌新聞』(短歌新聞社 1972.8.10) 226号 p.