秋日雜唱


09073
たそがれの湖を愛すと彼は告げき秘かに戀はれてゐしにあらずや
タソガレノ ウミヲアイスト カレハツゲキ ヒソカニコハレテ ヰシニアラズヤ

『埼玉婦人』(埼玉県教育局社会教育課 1950.12.1) 5号 p.22


09074
外人にピアノ習ふこともはゞかられシヨパンの樂譜秘めて通ひき
ガイジンニ ピアノナラフコトモ ハバカラレ シヨパンノガクフ ヒメテカヨヒキ

『埼玉婦人』(埼玉県教育局社会教育課 1950.12.1) 5号 p.22


09075
水底の藻屑とふ語にも憧れき死は美しと思ひゐし日々
ミナソコノ モクズトフゴニモ アコガレキ シハウツクシト オモヒヰシヒビ

『埼玉婦人』(埼玉県教育局社会教育課 1950.12.1) 5号 p.22


09076
鹿の鳴く秋は寂しく遺書めける手記をしきりに書きてゐたりき
シカノナク アキハサビシク イショメケル シュキヲシキリニ カキテヰタリキ

『埼玉婦人』(埼玉県教育局社会教育課 1950.12.1) 5号 p.22


09077
雪深く積もる夜なりきゆくりなく君服毒の知らせ受けしは
ユキフカク ツモルヨナリキ ユクリナク キミフクドクノ シラセウケシハ

『埼玉婦人』(埼玉県教育局社会教育課 1950.12.1) 5号 p.22


09078
佛像は信仰よりも美の対象と言ひし若き画家をわれは憎みき
ブツゾウハ シンコウヨリモビノ タイショウト イヒシワカキガカヲ ワレハニクミキ

『埼玉婦人』(埼玉県教育局社会教育課 1950.12.1) 5号 p.22