蝶のゆくへ


09282
庭石にこころの無しと言ひ切れずひねもす梅雨の雨に打たるる
ニワイシニ ココロノナシト イヒキレズ ヒネモスツユノ アメニウタルル

『婦人公論 別冊』(中央公論社 1981.7) p.229


09283
紫陽花の茂みをゆらり舞ひ出でし黒の揚羽はいづこまで飛ぶ
アジサイノ シゲミヲユラリ マヒイデシ クロノアゲハハ イヅコマデトブ

『婦人公論 別冊』(中央公論社 1981.7) p.229


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ゆらぎつつしづもりにつつ松の花かそかに天の中枢へ向く
ユラギツツ シヅモリニツツ マツノハナ カソカニテンノ チュウスウヘムク

『婦人公論 別冊』(中央公論社 1981.7) p.229


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若き日も今も苦しむ神ならずけものにもあらぬ魔のものとして
ワカキヒモ イマモクルシム カミナラズ ケモノニモアラヌ マノモノトシテ

『婦人公論 別冊』(中央公論社 1981.7) p.229


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はさみ撃ちに会ふ夢ひしと見て醒めて家をめぐれるまた雨の音
ハサミウチニ アフユメヒシト ミテサメテ イエヲメグレル マタアメノオト

『婦人公論 別冊』(中央公論社 1981.7) p.229