目次
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全短歌(歌集等)
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彩
とばり
紫いろの
てのひらを
眼先を
青胡桃の
胸板の
迷ひ犬か
裸足にて
をりをりに
さまざまの
09312
紫いろの切手を貼れる手紙来て陥れむとするにあらずや
ムラサキイロノ キッテヲハレル テガミキテ オトシイレムト スルニアラズヤ
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.32
09313
てのひらをくぼめて待てば青空の見えぬ傷より花こぼれ来る
テノヒラヲ クボメテマテバ アオゾラノ ミエヌキズヨリ ハナコボレクル
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.32
09314
眼先を離れずにゐる蛾の一つ気にすればまた限りなく舞ふ
マナサキヲ ハナレズニヰル ガノヒトツ キニスレバマタ カギリナクマフ
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.32
09315
青胡桃の匂ふ一つを手にのせて囚はれやすきこころも寂し
アオクルミノ ニオフヒトツヲ テニノセテ トラハレヤスキ ココロモサビシ
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.32
09316
胸板の厚き奴隷も息絶えて画廊出づれば夜の人通り
ムナイタノ アツキドレイモ イキタエテ ガロウイヅレバ ヨノヒトドオリ
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.33
09317
迷ひ犬か何かのやうにゐるわれか人はゆきかふ鎖を曳きて
マヨヒイヌカ ナニカノヤウニ ヰルワレカ ヒトハユキカフ クサリヲヒキテ
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.33
09318
裸足にて歩む痛みと思ふ夜も尖塔は十字のネオンを点す
ハダシニテ アユムイタミト オモフヨモ セントウハジュウジノ ネオンヲトモス
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.33
09319
をりをりに黒光りして現はるるいつの日かわれを吊るすべき鉤
ヲリヲリニ クロビカリシテ アラハルル イツノヒカワレヲ ツルスベキカギ
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.33
09320
さまざまの帳がありてめぐりあはぬ一生と思ひながく眠らず
サマザマノ トバリガアリテ メグリアハヌ ヒトヨトオモヒ ナガクネムラズ
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.33