目次
/
全短歌(歌集等)
/
彩
雪の章
桟橋の
一粒の
変へてゆく
喪の羽織
馬鈴薯を
編みものを
ふり仰ぐ
いかならむ
総毛だち
09321
桟橋の先までゆきて帰り来ぬかの夜の雪が肩にはららぐ
サンバシノ サキマデユキテ カエリキヌ カノヨノユキガ カタニハララグ
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.34
09322
一粒の火種を未だ持つわれと夜もすがらなる風を聴きゐし
ヒトツブノ ヒダネヲイマダ モツワレト ヨモスガラナル カゼヲキキヰシ
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.34
09323
変へてゆく生き方などと思はねど草に溶けつつ淡雪は降る
カヘテユク イキカタナドト オモハネド クサニトケツツ アワユキハフル
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.34
09324
喪の羽織肩より脱ぎて坐りたり午後の仕事がわれを待ちゐむ
モノハオリ カタヨリヌギテ スワリタリ ゴゴノシゴトガ ワレヲマチヰム
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.34
09325
馬鈴薯を食ぶる家族を描きしゴッホ笑ひころげてゐる少女たち
バレイショヲ タブルカゾクヲ エガキシゴッホ ワラヒコロゲテ ヰルショウジョタチ
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.35
09326
編みものを教へてくらす友の来てふくらかに編みし帽子呉れゆく
アミモノヲ オシヘテクラス トモノキテ フクラカニアミシ ボウシクレユク
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.35
09327
ふり仰ぐ枯れ木に大き目があけば見抜かれてゐる業あるごとし
フリアオグ カレキニオオキ メガアケバ ミヌカレテヰル ゴフアルゴトシ
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.35
09328
いかならむ賭けに敗れて来し夜か雪のしづくの光る片袖
イカナラム カケニヤブレテ コシヨルカ ユキノシヅクノ ヒカルカタソデ
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.35
09329
総毛だち吼ゆる木々かと見てゐしが窓を閉づれば風の音する
ソウケダチ ホユルキギカト ミテヰシガ マドヲトヅレバ カゼノオトスル
『彩』(新星書房 1965.6.26) p.35