伴ひてかたはらにアンダルシアのドラマの中の忽ちにいつまでも帰らざる翳ばかり折り合ひの水びたしのたそがれの陽の昃ればカルメンの醒めかけてカシオペアの巣ごもれるせめて深き霧深き縛めを妻として醒めぎはのわかちもつ手に重き笑ふ埴輪と失ひし距れは逸れ矢など流亡の波瀾呼ぶ電光に完きは稲の花のジギタリス遺されし菜の花に嚢み置く乱心をたどきなく歩みつつうとくしていづくにか風落ちて身を交はす踏みはづすへだたりを袖刳りの如何ならむ待たれてゐて太幹に浜荻の闇と闇を春めきて校正に皮相のみわが窓にぬけがらを離ればなれの安らぎに夕占を落ちてゆく責めたつる貝殻いろにうしろ向きのひといろにかたちなく塑像にてふるさとのいつのまに前髪にわが合図草萌えの街にて不意に裏通りを指貫をはばたきて足り易き釈明を鉢の外に塗りつぶし落飾し突き落とす風のなかに駅を出でて流れつつ栃の実の降り出でて手懸りの同じバスにいだきゆく結末を
『現代新鋭歌集』(東京創元社 1960.9) p.18
『現代新鋭歌集』(東京創元社 1960.9) p.18
『現代新鋭歌集』(東京創元社 1960.9) p.18
『現代新鋭歌集』(東京創元社 1960.9) p.19
『現代新鋭歌集』(東京創元社 1960.9) p.22
『現代新鋭歌集』(東京創元社 1960.9) p.23