目次
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全短歌(歌集等)
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現代短歌雁
石か動く
フリージアの
共に行く
間隔を
目の前を
扁平の
いつ知れず
ライターを
持ち歩み
目の部分
胸赤き
乱れたる
胸痛む
足音の
たれの持つ
身を窶し
09667
フリージアの匂ひして来ぬうたた寝のあとの朧ろもいつしか澄みて
フリージアノ ニオヒシテキヌ ウタタネノ アトノオボロモ イツシカスミテ
『現代短歌雁』(雁書館 1974.3) 6号 p.36
09668
共に行く旅など思ひ見がたきに海辺のやうな雲の湧く日よ
トモニユク タビナドオモヒ ミガタキニ ウミベノヤウナ クモノワクヒヨ
『現代短歌雁』(雁書館 1974.3) 6号 p.36
09669
間隔を測る人ゐて幾つもの礎石浮き出づ枯れ野の上に
カンカクヲ ハカルヒトヰテ イクツモノ ソセキウキイヅ カレノノウエニ
『現代短歌雁』(雁書館 1974.3) 6号 p.36
09670
目の前をよぎる無蓋車菜の花の黄より明るく硫黄を積めり
メノマエヲ ヨギルムガイシャ ナノハナノ キヨリアカルク イオウヲツメリ
『現代短歌雁』(雁書館 1974.3) 6号 p.36
09671
扁平の小さき魚ら舞ひあがる石か動くと思へるときに
ヘンペイノ チイサキウオラ マヒアガル イシカウゴクト オモヘルトキニ
『現代短歌雁』(雁書館 1974.3) 6号 p.36
09672
いつ知れず雪の降りゐてかすかなるわが指の影灰皿の影
イツシレズ ユキノフリヰテ カスカナル ワガユビノカゲ ハイザラノカゲ
『現代短歌雁』(雁書館 1974.3) 6号 p.36
09673
ライターをともして探す何ならむベンチのあたり気配うごきて
ライターヲ トモシテサガス ナニヤラム ベンチノアタリ ケハイウゴキテ
『現代短歌雁』(雁書館 1974.3) 6号 p.36
09674
持ち歩み眠れる間さへ離さぬにかたときばかり会ひて別るる
モチアユミ ネムレルマサヘ ハナサヌニ カタトキバカリ アヒテワカルル
『現代短歌雁』(雁書館 1974.3) 6号 p.37
09675
目の部分顎の部分と区切るときさだかには人を覚えてをらず
メノブブン アゴノブブント クギルトキ サダカニハヒトヲ オボエテヲラズ
『現代短歌雁』(雁書館 1974.3) 6号 p.37
09676
胸赤き山雀の子の来てゐしが柿の実も暮れて漆黒の珠
ムネアカキ ヤマガラノコノ キテヰシガ カキノミモクレテ シッコクノタマ
『現代短歌雁』(雁書館 1974.3) 6号 p.37
09677
乱れたる書架も映れり仮縫ひの肩幅を見る夜の鏡に
ミダレタル ショカモウツレリ カリヌヒノ カタハバヲミル ヨルノカガミニ
『現代短歌雁』(雁書館 1974.3) 6号 p.37
09678
胸痛むまで悔いをればいつか見し切り絵の花火割れてひらきぬ
ムネイタム マデクイヲレバ イツカミシ キリエノハナビ ワレテヒラキヌ
『現代短歌雁』(雁書館 1974.3) 6号 p.37
09679
足音の家をめぐると聴きてをりわが歩みたる音かも知れず
アシオトノ イエヲメグルト キキテヲリ ワガアユミタル オトカモシレズ
『現代短歌雁』(雁書館 1974.3) 6号 p.37
09680
たれの持つ大き白き手ひらめきてわがくらやみをよぎるときあり
タレノモツ オオキシロキテ ヒラメキテ ワガクラヤミヲ ヨギルトキアリ
『現代短歌雁』(雁書館 1974.3) 6号 p.37
09681
身を窶し幾夜ありけむ晒したるごとき白さに雲のたゆたふ
ミヲヤツシ イクヨアリケム サラシタル ゴトキシロサニ クモノタユタフ
『現代短歌雁』(雁書館 1974.3) 6号 p.37