目次
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全短歌(歌集等)
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大宮文芸
なべて終れる
たれの吹く
錯覚に
さまざまに
体ごと
との曇る
砂などの
全きを
かなたなる
三歳の
用の済み
09770
たれの吹くフルートならむ光りつつ亀裂を伝ふ水を思はす
タレノフク フルートナラム ヒカリツツ キレツヲツタフ ミズヲオモハス
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1980.11) 8号 p.10
09771
錯覚にすぎざりしことのよみがへる曇る眼鏡を拭きつつをれば
サッカクニ スギザリシコトノ ヨミガヘル クモルメガネヲ フキツツヲレバ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1980.11) 8号 p.10
09772
さまざまに願ひたゆたひ木の如く豊かに立つといふ日もあらず
サマザマニ ネガヒタユタヒ キノゴトク ユタカニタツト イフヒモアラズ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1980.11) 8号 p.10
09773
体ごと傾けて何を聴く人かをりをり翳る表情を見す
カラダゴト カタムケテナニヲ キクヒトカ ヲリヲリカゲル ヒョウジョウヲミス
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1980.11) 8号 p.10
09774
との曇る空のいづくに月ありて背筋光らせ犬の集まる
トノクモル ソラノイヅクニ ツキアリテ セスジヒカラセ イヌノアツマル
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1980.11) 8号 p.10
09775
砂などの濡れて詰まれる重さかと晴れぬ思ひを運びて帰る
スナナドノ ヌレテツマレル オモサカト ハレヌオモヒヲ ハコビテカエル
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1980.11) 8号 p.10
09776
全きを願ふならねど築きてはまた崩す塔の如き仕事よ
マッタキヲ ネガフナラネド キヅキテハ マタクズストウノ ゴトキシゴトヨ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1980.11) 8号 p.10
09777
かなたなる海の入り日にきはだちて大き寝釈迦の如し砂丘は
カナタナル ウミノイリヒニ キハダチテ オオキネシャカノ ゴトシサキュウハ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1980.11) 8号 p.10
09778
三歳の子の父といへりねたましきまでにかがよひサーブを打てり
サンサイノ コノチチトイヘリ ネタマシキ マデニカガヨヒ サーブヲウテリ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1980.11) 8号 p.10
09779
用の済みほとりと受話器置きたればなべて終れる如きしづけさ
ヨウノスミ ホトリトジュワキ オキタレバ ナベテオワレル ゴトキシヅケサ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1980.11) 8号 p.10