目次
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全短歌(歌集等)
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大宮文芸
春深みたり
白も黄も
おのづから
吊り皮を
駅名が
脈搏が
メントールの
はりつきて
遠くより
宇治十帖
ふるさとの
09815
白も黄もつぼみもたげて四季咲きの薔薇といへども春のいきほひ
シロモキモ ツボミモタゲテ シキザキノ バラトイヘドモ ハルノイキホヒ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1986.11) 14号 p.10
09816
おのづから体避けつつ撒く水の裏返るさま見て通りきぬ
オノヅカラ カラダサケツツ マクミズノ ウラガエルサマ ミテトオリキヌ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1986.11) 14号 p.10
09817
吊り皮を握る右手の長袖の肘より先の重たき日なり
ツリカワヲ ニギルミギテノ ナガソデノ ヒジヨリサキノ オモタキヒナリ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1986.11) 14号 p.10
09818
駅名がアナウンスされて反射的に座席を立ちし少年のをり
エキメイガ アナウンスサレテ ハンシャテキニ ザセキヲタチシ ショウネンノヲリ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1986.11) 14号 p.10
09819
脈搏が指の先まで打つ日にてたんぽぽの綿の飛ぶを見てゐる
ミャクハクガ ユビノサキマデ ウツヒニテ タンポポノワタノ トブヲミテヰル
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1986.11) 14号 p.10
09820
メントールの匂ひをさせてゐることの負ひめに列のうしろにつけり
メントールノ ニオヒヲサセテ ヰルコトノ オヒメニレツノ ウシロニツケリ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1986.11) 14号 p.10
09821
はりつきてゐたる桜の花びらも奪ひて去りぬ黒の自動車
ハリツキテ ヰタルサクラノ ハナビラモ ウバヒテサリヌ クロノジドウシャ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1986.11) 14号 p.10
09822
遠くより会釈したるはたれなりし喪服に角を曲りてゆけり
トオクヨリ エシャクシタルハ タレナリシ モフクニカドヲ マガリテユケリ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1986.11) 14号 p.10
09823
宇治十帖読み返しつつ流離めく夜毎のありて春深みたり
ウジジュウジョウ ヨミカエシツツ リュウリメク ヨゴトノアリテ ハルフカミタリ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1986.11) 14号 p.10
09824
ふるさとの山のふもとの畑なかの立葵にはいつも日が差す
フルサトノ ヤマノフモトノ ハタナカノ タチアオイニハ イツモヒガサス
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1986.11) 14号 p.10