目次
/
全短歌(歌集等)
/
大宮文芸
地底の音
麦畑
行きどまりの
バス停の
むじな偏の
ひしひしと
わがめぐり
ゆく末を
手すさびに
われの目も
温水器の
09825
麦畑わづかに熟れてこの町に雲水などは見かけずなりぬ
ムギバタケ ワヅカニウレテ コノマチニ ウンスイナドハ ミカケズナリヌ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1987.11) 15号 p.10
09826
行きどまりの垣にからみて鉄線の大き紫かかよりゐたり
ユキドマリノ カキニカラミテ テッセンノ オオキムラサキ カカヨリヰタリ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1987.11) 15号 p.10
09827
バス停の標識白くともるころラマ僧二人いづこへ帰る
バステイノ ヒョウシキシロク トモルコロ ラマソウフタリ イヅコヘカエル
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1987.11) 15号 p.10
09828
むじな偏の貌といふ字を書きをれば人間といふ不可解のもの
ムジナヘンノ カオトイフジヲ カキヲレバ ニンゲントイフ フカカイノモノ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1987.11) 15号 p.10
09829
ひしひしと人の増えくる夢なりき石筍などの立つさまに似て
ヒシヒシト ヒトノフエクル ユメナリキ セキジュンナドノ タツサマニニテ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1987.11) 15号 p.10
09830
わがめぐり目に見えて荒れてゆく日あり供華の黄菊は葉から衰ふ
ワガメグリ メニミエテアレテ ユクヒアリ クゲノキギクハ ハカラオトロフ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1987.11) 15号 p.10
09831
ゆく末をまた見失ふごとき日に軒を鳴らして狐雨降る
ユクスエヲ マタミウシナフ ゴトキヒニ ノキヲナラシテ キツネアメフル
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1987.11) 15号 p.10
09832
手すさびに拾ひたれども石は石の重さに土の匂ひをまとふ
テスサビニ ヒロヒタレドモ イシハイシノ オモサニツチノ ニオヒヲマトフ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1987.11) 15号 p.10
09833
われの目もけものの如く光らむか自転車のライトまともに浴びて
ワレノメモ ケモノノゴトク ヒカラムカ ジテンシャノライト マトモニアビテ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1987.11) 15号 p.10
09834
温水器の音と気づけどなほしばし地底の音のごとく続けリ
オンスイキノ オトトキヅケド ナホシバシ チテイノオトノ ゴトクツヅケリ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1987.11) 15号 p.10