目次
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全短歌(歌集等)
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大宮文芸
落ち葉籠
甲斐へ抜くる
無数の手が
何もかも
木の椅子に
ただの岩の
扇状地
白梅の
とめどなく
冬の陽に
山桜
09835
甲斐へ抜くる道がひとすぢありといふ片栗の咲くころには思ふ
カイヘヌクル ミチガヒトスヂ アリトイフ カタクリノサク コロニハオモフ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10
09836
無数の手が今し動きて灯をともす刻限ならめ暮れて来にけり
ムスウノテガ イマシウゴキテ ヒヲトモス コクゲンナラメ クレテキニケリ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10
09837
何もかも詰め込むやうに詰め込みて運び去られつ落ち葉の籠は
ナニモカモ ツメコムヤウニ ツメコミテ ハコビサラレツ オチバノカゴハ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10
09838
木の椅子に待たされをればときじくの何か言葉のごとき風花
キノイスニ マタサレヲレバ トキジクノ ナニカコトバノ ゴトキカザハナ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10
09839
ただの岩の円錐形と見てをれど水を引き寄せまた引き離す
タダノイワノ エンスイケイト ミテヲレド ミズヲヒキヨセ マタヒキハナス
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10
09840
扇状地といへる地形は黒板にえがかれし図のままに忘れず
センジョウチ トイヘルチケイハ コクバンニ エガカレシズノ ママニワスレズ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10
09841
白梅のはじけそめたる寒さにて振り返らずに犬は行きけり
シラウメノ ハジケソメタル サムサニテ フリカエラズニ イヌハユキケリ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10
09842
とめどなくくらがりを飛ぶ蝙蝠を仰ぎて飛べぬ蝙蝠われは
トメドナク クラガリヲトブ コウモリヲ アオギテトベヌ コウモリワレハ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10
09843
冬の陽に清められたる蓮沼のただ黒々と干潟なしたり
フユノヒニ キヨメラレタル ハスヌマノ タダクログロト ヒガタナシタリ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10
09844
山桜花の散りしく明るさに白拍子など出でて舞はずや
ヤマザクラ ハナノチリシク アカルサニ シラビヤウシナド イデテマハズヤ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10