牧歌


09855
牧草も雨に育つと告げ来れば牛の匂ひのふと立つごとし
ボクソウモ アメニソダツト ツゲクレバ ウシノニオヒノ フトタツゴトシ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1992.11) 20号 p.14


09856
クローバーの丘に少女は連れゆきて犬にも首輪を編みやりしとぞ
クローバーノ オカニショウジョハ ツレユキテ イヌニモクビワヲ アミヤリシトゾ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1992.11) 20号 p.14


09857
うしろより花の香のする風が来て返り咲きせる黄の薔薇に逢ふ
ウシロヨリ ハナノカノスル カゼガキテ カエリザキセル キノバラニアフ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1992.11) 20号 p.14


09858
くくと啼き岸に寄りくる一列に混じりてあらばわれはどの鴨
ククトナキ キシニヨリクル イチレツニ マジリテアラバ ワレハドノカモ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1992.11) 20号 p.14


09859
縫ひ針を撒きたるごとく光りつつ消えつつ稚魚は水にちらばる
ヌヒバリヲ マキタルゴトク ヒカリツツ キエツツチギョハ ミズニチラバル

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1992.11) 20号 p.14


09860
つながりて咲く蔓珠沙華はればれともう一本が離れて咲けリ
ツナガリテ サクマンジュシャゲ ハレバレト モウイッポンガ ハナレテサケリ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1992.11) 20号 p.14


09861
軍用馬にとられむ憂ひも今は無く姿やさしきジョッキーが乗る
グンヨウバニ トラレムウレヒモ イマハナク スガタヤサシキ ジョッキーガノル

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1992.11) 20号 p.14


09862
ぼかしたる絵がこのごろは多しとぞ嗅げばアネモネ生臭き花
ボカシタル エガコノゴロハ オオシトゾ カゲバアネモネ ナマグサキハナ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1992.11) 20号 p.14


09863
幼子の描きし村は夜に入りてどの窓も黄のあかりをともす
オサナゴノ エガキシムラハ ヨニイリテ ドノマドモキノ アカリヲトモス

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1992.11) 20号 p.14


09864
みどりごは見えぬもの見て泣くといふ噴水の秀に冬の日が差す
ミドリゴハ ミエヌモノミテ ナクトイフ フンスイノホニ フユノヒガサス

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1992.11) 20号 p.14