目次
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全短歌(歌集等)
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大宮文芸
銀の箔
朝々に
日を選ぶ
横隊に
甲虫に
ゲレンデの
かがまれる
たれも居なく
睡蓮の
桃山の
そののちに
09865
朝々に活け直しをれば菜の花とわれといつしかいのちを競ふ
アサアサニ イケナオシヲレバ ナノハナト ワレトイツシカ イノチヲキソフ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1993.11) 21号 p.10
09866
日を選ぶ習ひのわれに残りゐて古き傘のままマートまで行く
ヒヲエラブ ナラヒノワレニ ノコリヰテ フルキカサノママ マートマデユク
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1993.11) 21号 p.10
09867
横隊に水に浮かべる六羽ゐて振り向けばもうちりぢりの鴨
オウタイニ ミズニウカベル ロクワヰテ フリムケバモウ チリヂリノカモ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1993.11) 21号 p.10
09868
甲虫にある裏表裏側はリモコンか何かのやうに混みあふ
コウチュウニ アルウラオモテ ウラガワハ リモコンカナニカノ ヤウニコミアフ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1993.11) 21号 p.10
09869
ゲレンデの人工雪とぞ山腹に雪型のやうに残る模様は
ゲレンデノ ジンコウユキトゾ サンプクニ ユキガタノヤウニ ノコルモヨウハ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1993.11) 21号 p.10
09870
かがまれる後姿のままにゐてわかさぎ釣りは声を発せず
カガマレル ウシロスガタノ ママニヰテ ワカサギツリハ コエヲハッセズ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1993.11) 21号 p.10
09871
たれも居なくなりても咲かむ糸桜雌蕊雄蕊のひそとととのふ
タレモイナク ナリテモサカム イトザクラ メシベオシベノ ヒソトトトノフ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1993.11) 21号 p.10
09872
睡蓮の鉢に緋目高を飼ふといふ生きものの死はかなしきものを
スイレンノ ハチニヒメダカヲ カフトイフ イキモノノシハ カナシキモノヲ
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1993.11) 21号 p.10
09873
桃山のころの雲よと屏風絵を見をれば銀の箔がまたたく
モモヤマノ コロノクモヨト ビョウブエヲ ミヲレバギンノ ハクガマタタク
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1993.11) 21号 p.10
09874
そののちに降りにし雪に消されたる足跡のありとたれの言ひけむ
ソノノチニ フリニシユキニ ケサレタル アシアトノアリト タレノイヒケム
『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1993.11) 21号 p.10