目次
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全短歌(歌集等)
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おおみや
芝川早春
花咲ける
林のなかに
水位計の
カスタネット
美しき
川霧の
指先の
秒針が
褐炭の
毛糸の玉は
09885
花咲けるうちに知りたき木々の名と仰ぎつつ森のほとりをかよふ
ハナサケル ウチニシリタキ キギノナト アオギツツモリノ ホトリヲカヨフ
『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43
09886
林のなかにしづもれる家日曜の今朝はたれかがゐて釘を打つ
ハヤシノナカニ シヅモレルイエ ニチヨウノ ケサハタレカガ ヰテクギヲウツ
『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43
09887
水位計の立つあたりまで今日は行き牛小屋のあることも知りたり
スイイケイノ タツアタリマデ キョウハユキ ウシゴヤノアル コトモシリタリ
『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43
09888
カスタネット鳴らしつつ行く少年も次第に溶けて夕もやのなか
カスタネット ナラシツツユク ショウネンモ シダイニトケテ ユウモヤノナカ
『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43
09889
美しき拘束と言へる言葉あり妹のルージュ買ひゐて思ふ
ウツクシキ コウソクトイヘル コトバアリ イモウトノルージュ カヒヰテオモフ
『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43
09890
川霧のいつしか沈み見慣れたる灯をちりばめて暮れてゆく街
カワギリノ イツシカシズミ ミナレタル ヒヲチリバメテ クレテユクマチ
『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43
09891
指先の痛み忘れて目ざめたし明日読む本を枕べに置く
ユビサキノ イタミワスレテ メザメタシ アスヨムホンヲ マクラベニオク
『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43
09892
秒針がしきりにわれの髪に触れ廻ると思ひつつ眠りたり
ビョウシンガ シキリニワレノ カミニフレ マワルトオモヒ ツツネムリタリ
『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43
09893
褐炭の山のごときを越えゆけり身をいろどらむ鱗も持たず
カッタンノ ヤマノゴトキヲ コエユケリ ミヲイロドラム ウロコモモタズ
『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43
09894
毛糸の玉はやさしく膝へ帰りつつ妹に編む春のスカーフ
ケイトノタマハ ヤサシクヒザヘ カエリツツ イモウトニアム ハルノスカーフ
『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43