目次
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全短歌(歌集等)
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おおみや
硝子の天使
フラメンコの
人一人
工事場の
複製の
方角を
バザールに
対岸の
葉脈の
貝合はせの
いづこまで
09895
フラメンコの踊り手らしき少女らの過ぎて再び落ち葉降る坂
フラメンコノ オドリテラシキ ショウジョラノ スギテフタタビ オチバフルサカ
『おおみや』(大宮名店会 1970.1) 29号 p.21
09896
人一人忘れ得べしや濃みどりの服地探して街を行く日も
ヒトヒトリ ワスレウベシヤ コミドリノ フクジサガシテ マチヲユクヒモ
『おおみや』(大宮名店会 1970.1) 29号 p.21
09897
工事場のかたはら過ぎて声高になりゐたる身をひきもどしゆく
コウジバノ カタハラスギテ コエダカニ ナリヰタルミヲ ヒキモドシユク
『おおみや』(大宮名店会 1970.1) 29号 p.21
09898
複製のモナ・リザ仰ぎつつ待ちていかなる人に会ふわれならむ
フクセイノ モナ・リザアオギ ツツマチテ イカナルヒトニ アフワレナラム
『おおみや』(大宮名店会 1970.1) 29号 p.21
09899
方角を占はれゐる椅子の上まぶた閉ぢてもいづこも寒し
ホウガクヲ ウラナハレヰル イスノウエ マブタトヂテモ イヅコモサムシ
『おおみや』(大宮名店会 1970.1) 29号 p.21
09900
バザールにガラスの翼張りゐたる小さき天使も運び去られぬ
バザールニ ガラスノツバサ ハリヰタル チイサキテンシモ ハコビサラレヌ
『おおみや』(大宮名店会 1970.1) 29号 p.21
09901
対岸の暗き木の間はたれかゐてフニクラ・フニクラ口笛に吹く
タイガンノ クラキコノマハ タレカヰテ フニクラフニクラ クチブエニフク
『おおみや』(大宮名店会 1970.1) 29号 p.21
09902
葉脈のやうに途切るる物語閉館を告ぐるチャイムひびきて
ヨウミャクノ ヤウニトギルル モノガタリ ヘイカンヲツグル チャイムヒビキテ
『おおみや』(大宮名店会 1970.1) 29号 p.21
09903
貝合はせの貝もウインドウに見えずなりわが楽しみの一つ失ふ
カイアハセノ カイモウインドウニ ミエズナリ ワガタノシミノ ヒトツウシナフ
『おおみや』(大宮名店会 1970.1) 29号 p.21
09904
いづこまで帰るや硝子の指環して夜毎のバスに落ちあふ少女
イヅコマデ カエルヤガラスノ ユビワシテ ヨゴトノバスニ オチアフショウジョ
『おおみや』(大宮名店会 1970.1) 29号 p.21