目次
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全短歌(歌集等)
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おおみや
風の凪ぐとき
雲を映す
クレパスは
電車待つ
階段から
花びらの
口径の
うずくまる
襟あしの
動くとも
思ひゐて
09915
雲を映す日の多くなりし水の上風は渡らふバリウム色に
クモヲウツス ヒノオオクナリシ ミズノウエ カゼハワタラフ バリウムイロニ
『おおみや』(大宮名店会 1972.1) 41号 p.23
09916
クレパスは青のみとなり吹く風も野も真っ青に塗るほかあらず
クレパスハ アオノミトナリ フクカゼモ ノモマッサオニ ヌルホカアラズ
『おおみや』(大宮名店会 1972.1) 41号 p.23
09917
電車待つあひだしばらく話しゐて表裏ある声を持ちあふ
デンシャマツ アヒダシバラク ハナシヰテ オモテウラアル コエヲモチアフ
『おおみや』(大宮名店会 1972.1) 41号 p.23
09918
階段から改札口へ殺気だちときに静けし人の流れは
カイダンカラ カイサツグチヘ サッキダチ トキニシズケシ ヒトノナガレハ
『おおみや』(大宮名店会 1972.1) 41号 p.23
09919
花びらのゆるみゐし薔薇カーテンの襞に触れたるのみに崩るる
ハナビラノ ユルミヰシバラ カーテンノ ヒダニフレタル ノミニクズルル
『おおみや』(大宮名店会 1972.1) 41号 p.23
09920
口径のかすかに一つ一つ違ふカットグラスを並べゆくとき
コウケイノ カスカニヒトツ ヒトツチガフ カットグラスヲ ナラベユクトキ
『おおみや』(大宮名店会 1972.1) 41号 p.32
09921
うずくまるいづこもわれの流刑地草抜けば草の匂ひがのぼる
ウズクマル イヅコモワレノ リュウケイチ クサヌケバクサノ ニオヒガノボル
『おおみや』(大宮名店会 1972.1) 41号 p.23
09922
襟あしの荒れたる感じ身に残る楡のこずゑの風凪ぐときに
エリアシノ アレタルカンジ ミニノコル ニレノコズヱノ カゼナグトキニ
『おおみや』(大宮名店会 1972.1) 41号 p.23
09923
動くともなくただ薄く運命のかげりのやうな雲が見えゐる
ウゴクトモ ナクタダウスク ウンメイノ カゲリノヤウナ クモガミエヰル
『おおみや』(大宮名店会 1972.1) 41号 p.23
09924
思ひゐて驚きやすしグラスのなかの氷の一つ不意にくつがへる
オモヒヰテ オドロキヤスシ グラスノナカノ コオリノヒトツ フイニクツガヘル
『おおみや』(大宮名店会 1972.1) 41号 p.23