目次
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全短歌(歌集等)
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おおみや
金糸の花
裁ち屑を
逝きしより
前を行く
思い来し
時かけて
兵たりし
さりげなく
その母に
思ひたる
一つ一つ
09935
裁ち屑を掃きよせをればひとかたに集まるごとしわれの思ひも
タチクズヲ ハキヨセヲレバ ヒトカタニ アツマルゴトシ ワレノオモヒモ
『おおみや』(大宮名店会 1981.6) 93号 p.47
09936
逝きしより八年を経ておもかげもいつしか写真の顔に定まる
ユキシヨリ ハチネンヲヘテ オモカゲモ イツシカシャシンノ カオニサダマル
『おおみや』(大宮名店会 1981.6) 93号 p.47
09937
前を行く一人の帯に浮き出でし金糸の花もいつしかあらず
マエヲユク ヒトリノオビニ ウキイデシ キンシノハナモ イツシカアラズ
『おおみや』(大宮名店会 1981.6) 93号 p.47
09938
思い来しことのくさぐさ相会ひて言葉となして何ぞはかなき
オモイコシ コトノクサグサ アイアヒテ コトバトナシテ ナンゾハカナキ
『おおみや』(大宮名店会 1981.6) 93号 p.47
09939
時かけて語りあひつつ男ゆゑ女ゆゑ執することの違へる
トキカケテ カタリアヒツツ オトコユヱ オンナユヱシフスル コトノタガヘル
『おおみや』(大宮名店会 1981.6) 93号 p.47
09940
兵たりし昔を言ひて飲食を急ぐ習ひをみづから笑ふ
ヘイタリシ ムカシヲイヒテ インショクヲ イソグナラヒヲ ミヅカラワラフ
『おおみや』(大宮名店会 1981.6) 93号 p.47
09941
さりげなく聞きたることのまだらなす胸と思へり別れむとして
サリゲナク キキタルコトノ マダラナス ムネトオモヘリ ワカレムトシテ
『おおみや』(大宮名店会 1981.6) 93号 p.47
09942
その母に返して胸のさびしけれあたたかかりしみどり児の嵩
ソノハハニ カエシテムネノ サビシケレ アタタカカリシ ミドリゴノカサ
『おおみや』(大宮名店会 1981.6) 93号 p.47
09943
思ひたるのみに罰する掟あらばいくたびわれの死にたるならむ
オモヒタル ノミニバッスル オキテアラバ イクタビワレノ シニタルナラム
『おおみや』(大宮名店会 1981.6) 93号 p.47
09944
一つ一つ壊しつつ生きて来しならむチェコの硝子の灰皿も失す
ヒトツヒトツ コワシツツイキテ コシナラム チェコノガラスノ ハイザラモウス
『おおみや』(大宮名店会 1981.6) 93号 p.47