版画の鴉


09957
燃えしぶりゐたりし紙の形代は燃え尽きむとして炎あげたり
モエシブリ ヰタリシカミノ カタシロハ モエツキムトシテ ホノオアゲタリ

『埼玉歌人』(埼玉県歌人会 1989.7) 38号 p.2


09958
映像のまぶしき日にてFMにモーツァルトのコンチェルト聞く
エイゾウノ マブシキヒニテ エフエムニ モーツァルトノ コンチェルトキク

『埼玉歌人』(埼玉県歌人会 1989.7) 38号 p.2


09959
混み合へる待合室の片隅に繃帯を巻けるゴッホもゐたり
コミアヘル マチアイシツノ カタスミニ ホウタイヲマケル ゴッホモヰタリ

『埼玉歌人』(埼玉県歌人会 1989.7) 38号 p.2


09960
扇形にひろげられゆく紙幣見ゆガラス隔てし無風のかなた
センケイニ ヒロゲラレユク シヘイミユ ガラスヘダテシ ムフウノカナタ

『埼玉歌人』(埼玉県歌人会 1989.7) 38号 p.2


09961
飛び出して来む勢ひにばらばらと鴉は舞へり版画の空を
トビダシテ コムイキオヒニ バラバラト カラスハマヘリ ハンガノソラヲ

『埼玉歌人』(埼玉県歌人会 1989.7) 38号 p.2