等高線


09968
きららかについばむ鳥の去りしあとながくかかりて水はしづまる
キララカニ ツイバムトリノ サリシアト ナガクカカリテ ミズハシヅマル

『東京しらうめ』(白梅同窓会東京支部 1985.3) p.


09969
どのやうに生きても一生繭なさぬ糸を吐きつぐ一生もあらむ
ドノヤウニ イキテモヒトヨ マユナサヌ イトヲハキツグ ヒトヨモアラム

『東京しらうめ』(白梅同窓会東京支部 1985.3) p.


09970
音のして闇に目ざむる驚きは野に棲む兎もわれもかはらぬ
オトノシテ ヤミニメザムル オドロキハ ノニスムウサギモ ワレモカハラヌ

『東京しらうめ』(白梅同窓会東京支部 1985.3) p.


09971
人の体に等高線をゑがける図見て立ちくれば身がやはらかし
ヒトノカラダニ トウコウセンヲ ヱガケルズ ミテタチクレバ ミガヤハラカシ

『東京しらうめ』(白梅同窓会東京支部 1985.3) p.


09972
生き残ることのさびしさかたはらに犬の首輪もうづめてやりぬ
イキノコル コトノサビシサ カタハラニ イヌノクビワモ ウヅメテヤリヌ

『東京しらうめ』(白梅同窓会東京支部 1985.3) p.


09973
うづくまるいづこもわれの流刑地草抜けば草の匂ひがのぼる
ウヅクマル イヅコモワレノ リュウケイチ クサヌケバクサノ ニオヒガノボル

『東京しらうめ』(白梅同窓会東京支部 1985.3) p.


09974
人の口のかたちなど見えてゐたりしが電話を切ればまた雨の音
ヒトノクチノ カタチナドミエテ ヰタリシガ デンワヲキレバ マタアメノオト

『東京しらうめ』(白梅同窓会東京支部 1985.3) p.