春雪


10032
紅椿のひとつ咲きたる寮園にひそけきかもよ春の淡雪
ベニツバキノ ヒトツサキタル リョウエンニ ヒソケキカモヨ ハルノアワユキ

『歌と随筆』(蒼明社 1946.4) 第1巻4号 p.20


10033
ひそやかに花にしみつゝ春雪の消えゆくさまは何にたとへむ
ヒソヤカニ ハナニシミツツ シュンセツノ キエユクサマハ ナニニタトヘム

『歌と随筆』(蒼明社 1946.4) 第1巻4号 p.20


10034
うすら陽の傾きそめていつのまにかわが籠り居に夕さりにけり
ウスラビノ カタムキソメテ イツノマニカ ワガコモリイニ ユウサリニケリ

『歌と随筆』(蒼明社 1946.4) 第1巻4号 p.20


10035
松かさのひとつひとつに火移るが楽しと言へば母も笑まへり
マツカサノ ヒトツヒトツニ ヒウツルガ タノシトイヘバ ハハモエマヘリ

『歌と随筆』(蒼明社 1946.4) 第1巻4号 p.20


10036
窓の灯にはえて夜ふけのぼたん雪ひとつひとつが光りつゝ降る
マドノヒニ ハエテヨフケノ ボタンユキ ヒトツヒトツガ ヒカリツツフル

『歌と随筆』(蒼明社 1946.4) 第1巻4号 p.20