春宵


10037
ほのぼのと背のぬくみくる道にして少女と吾と默しゆきたり
ホノボノト セノヌクミクル ミチニシテ ヲトメトワレト モクシユキタリ

『歌と随筆』(蒼明社 1946.5) 第1巻5号 p.18


10038
山ひだのあをむかなたのうす雲にほの翳るほどの春の愁あり
ヤマヒダノ アヲムカナタノ ウスクモニ ホノカゲルホドノ ハルノウレイアリ

『歌と随筆』(蒼明社 1946.5) 第1巻5号 p.18


10039
あわあわと漂ふ雲のそのはてに晝の星くづ光りつゝゐる
アワアワト タダヨフクモノ ソノハテニ ヒルノホシクヅ ヒカリツツヰル

『歌と随筆』(蒼明社 1946.5) 第1巻5号 p.18


10040
現つには咲かぬものをと夢にゆれし白蘭を思ひまた眼をとづる
ウツツニハ サカヌモノヲト ユメニユレシ ハクランヲオモヒ マタメヲトヅル

『歌と随筆』(蒼明社 1946.5) 第1巻5号 p.18


10041
日にいくたび鐘を合圖にゆき歸るかゝる世すぎのいつまでならむ
ヒニイクタビ カネヲアイズニ ユキカエル カカルヨスギノ イツマデナラム

『歌と随筆』(蒼明社 1946.5) 第1巻5号 p.18