春の洋琴


10042
目をとぢて聞きます母と彈く吾ととけ入る如し春光うらゝに
メヲトヂテ キキマスハハト ヒクワレト トケイルゴトシ シュンコウウララニ

『歌と随筆』(蒼明社 1946.7) 第1巻7号 p.13


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奏づれば圓舞曲あくまで華麗なりこのピアノこそ吾を倚らしめ
カナヅレバ ワルツアクマデ カレイナリ コノピアノコソ ワレヲヨラシメ

『歌と随筆』(蒼明社 1946.7) 第1巻7号 p.13


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みちのくのシヤーロツクホームズとうたはれし父の臨終の寂しかりけむ
ミチノクノ シヤーロツクホームズト ウタハレシ チチノイマハノ サビシカリケム

『歌と随筆』(蒼明社 1946.7) 第1巻7号 p.13


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刑事とふ職にふさはずまなざしのやさしかりしを人も知りをり
ケイジトフ ショクニフサハズ マナザシノ ヤサシカリシヲ ヒトモシリヲリ

『歌と随筆』(蒼明社 1946.7) 第1巻7号 p.13


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身を捨てゝ盡くすは一人吾のみと嘆きつゝ晩酌をくみゐし父はも
ミヲステテ ツクスハヒトリ ワレノミト ナゲキツツサケヲ クミヰシチチハモ

『歌と随筆』(蒼明社 1946.7) 第1巻7号 p.13