目次
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全短歌(歌集等)
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歌と随筆
約成らむとして
摘まれては
匂ひ淡き
ま近くは
視線の
溷濁の
激流に
激情は
ぎりぎりに
人界の
かくて又
10059
摘まれてはいよいよ香る花ならむ君に摘まるゝ吾はうれしゑ
ツマレテハ イヨイヨカオル ハナナラム キミニツマルル ワレハウレシヱ
『歌と随筆』(蒼明社 1947.3) 第2巻3号 p.10
10060
匂ひ淡き花も摘まるゝさだめとふわが宿命こそ哀しきろかも
ニオヒアワキ ハナモツマルル サダメトフ ワガサダメコソ カナシキロカモ
『歌と随筆』(蒼明社 1947.3) 第2巻3号 p.10
10061
ま近くは共に住むべき契りなれ君を見ぬ日はさびしかりけり
マヂカクハ トモニスムベキ チギリナレ キミヲミヌヒハ サビシカリケリ
『歌と随筆』(蒼明社 1947.3) 第2巻3号 p.10
10062
視線の合へばはかなくそらすこと幾たびかせし今日の日中に
マナザシノ アヘバハカナク ソラスコト イクタビカセシ キョウノヒナカニ
『歌と随筆』(蒼明社 1947.3) 第2巻3号 p.10
10063
溷濁の現し世なれどわが戀はひとつこゝろにとほれるものを
コンダクノ ウツシヨナレド ワガコイハ ヒトツココロニ トホレルモノヲ
『歌と随筆』(蒼明社 1947.3) 第2巻3号 p.10
10064
激流におしながされてとめどなき木の葉か君に憑かれし吾は
ゲキリュウニ オシナガサレテ トメドナキ コノハカキミニ ツカレシワレハ
『歌と随筆』(蒼明社 1947.3) 第2巻3号 p.10
10065
激情はむしろさびしき靜寂とつのる思ひは斷ちてねむるべし
ゲキジョウハ ムシロサビシキ セイジャクト ツノルオモヒハ タチテネムルベシ
『歌と随筆』(蒼明社 1947.3) 第2巻3号 p.10
10066
ぎりぎりに堪へてぞ睡るこの願遂げ得ざりせば死ぬべし吾は
ギリギリニ タヘテゾネムル コノネガイ トゲエザリセバ シヌベシワレハ
『歌と随筆』(蒼明社 1947.3) 第2巻3号 p.10
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人界の果ての寂しさに吾は沈めど陰影はやがて流れゆくべし
ジンカイノ ハテノサビシサニ ワレハシズメド インエイハヤガテ ナガレユクベシ
『歌と随筆』(蒼明社 1947.3) 第2巻3号 p.10
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かくて又明日はありとふ確信はせめて今宵のねむりいざなふ
カクテマタ アシタハアリトフ カクシンハ セメテコヨイノ ネムリイザナフ
『歌と随筆』(蒼明社 1947.3) 第2巻3号 p.10