目ざめてはふと觸れしれんぎやうの梅一輪肉親のわが窓の寂しくて春草の一つ歎きにぎりぎりにわが夫の下枝に靜かなる個の嘆ききららめく論点は春の夜の江戸文學に向つ家の母ひとり執すればいささかの人と人と幾たびかこの家ゆ次々に自己嫌惡憤り憤り愛燐の音もなくすべもなく激痛の相ともに現し世の若き父がさびさびと白衣着て夫に似し父と母の病める日のまぼろしの病み衰へし身もたまも骨ばみし重症三月癒えそめのみづ色のしのびやかな夕ぐれは
『歌と随筆』(蒼明社 1949.6) 第4巻5号 p.9
『歌と随筆』(蒼明社 1949.6) 第4巻5号 p.10
『歌と随筆』(蒼明社 1949.6) 第4巻5号 p.10
『歌と随筆』(蒼明社 1949.6) 第4巻5号 p.11
『歌と随筆』(蒼明社 1949.6) 第4巻5号 p.11