目次
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全短歌(歌集等)
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歌と随筆
春の欲求
シヨパンひそかに
マルクスを
わが窓の
郷愁に
獨り居て
あだめきて
むしろ惡に
10147
シヨパンひそかに鳴れる茶房は晝たけて花ある卓に吾ら對ひつ
シヨパンヒソカニ ナレルサボウハ ヒルタケテ ハナアルタクニ ワレラソロヒツ
『歌と随筆』(蒼明社 1949.6) 第4巻5号 p.15
10148
マルクスを讀めどもこれも究極の吾の倚るべき哲理ならなく
マルクスヲ ヨメドモコレモ キュウキョクノ ワレノヨルベキ テツリナラナク
『歌と随筆』(蒼明社 1949.6) 第4巻5号 p.15
10149
わが窓の棕梠の芽吹きのしるき頃をしみじみ吾は住み難く居り
ワガマドノ シュロノメブキノ シルキコロヲ シミジミワレハ スミガタクオリ
『歌と随筆』(蒼明社 1949.6) 第4巻5号 p.15
10150
郷愁におぼるる宵の街かどよ沈丁花など時に匂ひて
キョウシュウニ オボルルヨイノ マチカドヨ ジンチョウゲナド トキニニオヒテ
『歌と随筆』(蒼明社 1949.6) 第4巻5号 p.15
10151
獨り居て思ひは切に渇く夜をしとしとと雨は屋根濡らすらし
ヒトリイテ オモヒハセツニ カワクヨヲ シトシトトアメハ ヤネヌラスラシ
『歌と随筆』(蒼明社 1949.6) 第4巻5号 p.15
10152
あだめきてタンゴ舞ひたき願ひなどしきりに湧くも寂しさの果て
アダメキテ タンゴマヒタキ ネガヒナド シキリニワクモ サビシサノハテ
『歌と随筆』(蒼明社 1949.6) 第4巻5号 p.15
10153
むしろ惡に憑かれなば易く生き得んかかく思ふ夜を斷ちて寝んとす
ムシロアクニ ツカレナバヤスク イキエンカ カクオモフヨヲ タチテネントス
『歌と随筆』(蒼明社 1949.6) 第4巻5号 p.15