目次
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全短歌(歌集等)
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朱扇
世相
涙ためて
泣き易き
獨り身も
モスコーを
夜の間も
わがために
家庭菜園も
その頃の
組合運動が
しみじみと
10186
涙ためて語るこの友も孤獨にて戰ひの後を苦しめるらし
ナミダタメテ カタルコノトモモ コドクニテ タタカヒノアトヲ クルシメルラシ
『朱扇』( 1950.6) 第2巻6号 p.4
10187
泣き易き人妻となりしわれに反し黨員の友はどこか圖太し
ナキヤスキ ヒトヅマトナリシ ワレニハンシ トウインノトモハ ドコカズブトシ
『朱扇』( 1950.6) 第2巻6号 p.4
10188
獨り身も三十すぎし友がふと呪詛ともひびく言葉を洩らす
ヒトリミモ サンジュウスギシ トモガフト ジュソトモヒビク コトバヲモラス
『朱扇』( 1950.6) 第2巻6号 p.4
10189
モスコーを樂園の如く言ふ君の耀ける眼をわれは見しのみ
モスコーヲ ラクエンノゴトク イフキミノ カガヤケルメヲ ワレハミシノミ
『朱扇』( 1950.6) 第2巻6号 p.4
10190
夜の間も人生は流れるものをとて讀書に更かす夫に吾も縫ふ
ヨルノマモ ジンセイハナガレル モノヲトテ ドクショニフカス ツマニワレモヌフ
『朱扇』( 1950.6) 第2巻6号 p.4
10191
わがために金策もしつつ芥川賞を唯一の夢と君は書きつぐ
ワガタメニ キンサクモシツツ アクタガワショウヲ ユイツノユメト キミハカキツグ
『朱扇』( 1950.6) 第2巻6号 p.4
10192
家庭菜園も作らず讀書する二人を怠惰と人は噂するらし
カテイサイエンモ ツクラズドクショ スルフタリヲ タイダトヒトハ ウワサスルラシ
『朱扇』( 1950.6) 第2巻6号 p.4
10193
その頃のロマンスや如何と人問へど寧ろ血みどろの戰なりき
ソノコロノ ロマンスヤイカト ヒトトヘド ムシロチミドロノ イクサナリキ
『朱扇』( 1950.6) 第2巻6号 p.4
10194
組合運動が取り持つ花と噂され短き逢ひも妨げられき
クミアイウンドウガ トリモツハナト ウワササレ ミジカキアヒモ サマタゲラレキ
『朱扇』( 1950.6) 第2巻6号 p.4
10195
しみじみと星仰ぐこともなき二人在る夜は諍ふ納税のことに
シミジミト ホシアオグコトモ ナキフタリ アルヨハアラソフ ノウゼイノコトニ
『朱扇』( 1950.6) 第2巻6号 p.4