目次
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全短歌(歌集等)
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朱扇
身邊雜記
諦めて
誇り捨てゝ
前身を
母病むとふ
打開策の
それぞれに
諦めの
みごもりし
10201
諦めてゐるとも言ひぬ未歸還の夫持つ友はややすてばちに
アキラメテ ヰルトモイヒヌ ミキカンノ ツマモツトモハ ヤヤステバチニ
『朱扇』( 1950.7) 第2巻7号 p.3
10202
誇り捨てゝ身を落しゆく女がむしろ羨しといふ友も貧しく
ホコリステテ ミヲオトシユク オンナガムシロ トモシトイフ トモモマズシク
『朱扇』( 1950.7) 第2巻7号 p.3
10203
前身を秘めて住みつきし隣室の女に今宵客のけはひす
ゼンシンヲ ヒメテスミツキシ リンシツノ オンナニコヨイ キャクノケハヒス
『朱扇』( 1950.7) 第2巻7号 p.3
10204
母病むとふ手紙を出して讀み返す夜更けては又降り出づる雨
ハハヤムトフ テガミヲダシテ ヨミカエス ヨフケテハマタ フリイヅルアメ
『朱扇』( 1950.7) 第2巻7号 p.3
10205
打開策のなきままに日は過ぎてゆく市營住宅も當らざりけり
ダカイサクノ ナキママニヒハ スギテユク シエイジュウタクモ アタラザリケリ
『朱扇』( 1950.7) 第2巻7号 p.3
10206
それぞれに哀歓もちてゆくならむ夕べの街を急ぐ人らも
ソレゾレニ アイカンモチテ ユクナラム ユウベノマチヲ イソグヒトラモ
『朱扇』( 1950.7) 第2巻7号 p.3
10207
諦めの中にも安息はあるなどと夫に去られし友の云ふかも
アキラメノ ナカニモアンソクハ アルナドト ツマニサラレシ トモノイフカモ
『朱扇』( 1950.7) 第2巻7号 p.3
10208
みごもりしままに嫁ぐとふ敎へ子の噂も傳へて客は歸りぬ
ミゴモリシ ママニトツグトフ オシヘゴノ ウワサモツタヘテ キャクハカエリヌ
『朱扇』( 1950.7) 第2巻7号 p.3