病室


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花言葉集めてノートせし日日よ母は若く姉も生きてゐたりし
ハナコトバ アツメテノート セシヒビヨ ハハハワカクアネモ イキテヰタリシ

『朱扇』( 1950.8) 第2巻8号 p.4


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眼帶をしたる目うづく夕つ方友の離黨を聞きて歸りぬ
ガンタイヲ シタルメウヅク ユウツガタ トモノリトウヲ キキテカエリヌ

『朱扇』( 1950.8) 第2巻8号 p.4


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相容れぬ思想を持ちて爭ひきかの友もつひに離黨せしとぞ
アイイレヌ シソウヲモチテ アラソヒキ カノトモモツヒニ リトウセシトゾ

『朱扇』( 1950.8) 第2巻8号 p.4


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歸り途に星座仰ぐ癖もいつしかに忘れてゐしか餘裕なきまま
カエリミチニ セイザアオグクセモ イツシカニ ワスレテヰシカ ユトリナキママ

『朱扇』( 1950.8) 第2巻8号 p.4


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洗ひたるハンカチに滲む頭文字よ遂ぐる日までの戀長かりき
アラヒタル ハンカチニニジム イニシアルヨ トグルヒマデノ コイナガカリキ

『朱扇』( 1950.8) 第2巻8号 p.4


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病室のゴッホの額もよごれゐて友は氣弱く又來よと言ふ
ビョウシツノ ゴッホノガクモ ヨゴレヰテ トモハキヨワク マタコヨトイフ

『朱扇』( 1950.8) 第2巻8号 p.4