目次
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全短歌(歌集等)
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朱扇
風媒花
風媒花の
師のみ子の
編集後記
寂しくなれば
風景画の
時雨すぎて
誕生石を
愛情も
家に居ても
恋を得て
10229
風媒花の如くはかなしといふ便り嫁ぎゆく友も寂しかるらし
フウバイカノ ゴトクハカナシト イフタヨリ トツギユクトモモ サビシカルラシ
『朱扇』(朱扇社 1950.11) 第2巻11号 p.4
10230
師のみ子の逝きし知らせに立ちすくむ校正終へて帰りし夕べ
シノミコノ ユキシシラセニ タチスクム コウセイオヘテ カエリシユウベ
『朱扇』(朱扇社 1950.11) 第2巻11号 p.4
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編集後記書き終へし夜半寢むとして枕べにおくペンと聖書を
ヘンシュウコウキ カキオヘシヨワ ネムトシテ マクラベニオク ペントセイショヲ
『朱扇』(朱扇社 1950.11) 第2巻11号 p.4
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寂しくなれば花など買ひて訪るる友独り住む丘のアトリエ
サビシクナレバ ハナナドカヒテ オトズルル トモヒトリスム オカノアトリエ
『朱扇』(朱扇社 1950.11) 第2巻11号 p.4
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風景画の描きさしのある窓の辺に友は疲れてまどろみゐたり
フウケイガノ カキサシノアル マドノベニ トモハツカレテ マドロミヰタリ
『朱扇』(朱扇社 1950.11) 第2巻11号 p.4
10234
時雨すぎて木の間滴する夕つ方ゴッホ画集を借りて帰りぬ
シグレスギテ コノマシズクスル ユウツカタ ゴッホガシュウヲ カリテカエリヌ
『朱扇』(朱扇社 1950.11) 第2巻11号 p.4
10235
誕生石をちりばめし指環も今はなく独りの母も老い給ひたり
タンジョウセキヲ チリバメシユビワモ イマハナク ヒトリノハハモ オイタマヒタリ
『朱扇』(朱扇社 1950.11) 第2巻11号 p.4
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愛情も既に生活を支へ難し不和の中にわがこころ荒みゆく
アイジョウモ スデニセイカツヲ ササヘガタシ フワノナカニワガ ココロアラミユク
『朱扇』(朱扇社 1950.11) 第2巻11号 p.4
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家に居ても最小限に口をきく身一つを今は守る外なし
イエニイテモ サイショウゲンニ クチヲキク ミヒトツヲイマハ マモルホカナシ
『朱扇』(朱扇社 1950.11) 第2巻11号 p.4
10238
恋を得て秋には嫁ぐとふ敎へ子の長き手紙を見つつ眠らむ
コイヲエテ アキニハトツグトフ オシヘゴノ ナガキテガミヲ ミツツネムラム
『朱扇』(朱扇社 1950.11) 第2巻11号 p.4