目次
/
全短歌(歌集等)
/
朱扇
春遠し
死はすべてを
懀まれつつ
歸らざる
不和にさへ
日記書きて
窮極は
恢復の
誤解とけぬ
職のなき
中座して
軒に來て
10250
死はすべてを解決するといふ語句も思ふ時あり不和は苦しく
シハスベテヲ カイケツスルト イフゴクモ オモフトキアリ フワハクルシク
『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3
10251
懀まれつつ盡くす誠も限界にありと思ふ今朝は音たてて掃く
ニクマレツツ ツクスマコトモ ゲンカイニ アリトオモフケサハ オトタテテハク
『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3
10252
歸らざる君にいらだち待ち居たる心鎭めて眠らむ今は
カエラザル キミニイラダチ マチイタル ココロシズメテ ネムラムイマハ
『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3
10253
不和にさへ今は慣れつつ夜半獨り源氏物語讀みつぎてゆく
フワニサヘ イマハナレツツ ヨワヒトリ ゲンジモノガタリ ヨミツギテユク
『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3
10254
日記書きて夜更かしをればひそやかに鳴き移るらし候鳥の聲
ニッキカキテ ヨフカシヲレバ ヒソヤカニ ナキウツルラシ コウチョウノコエ
『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3
10255
窮極は愛のみが二人を支ふると信じ得る身をしあはせとせむ
キュウキョクハ アイノミガフタリヲ ササフルト シンジウルミヲ シアハセトセム
『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3
10256
恢復の望みも既になき友よりリルケ詩集に頬をよせて眠れる
カイフクノ ノゾミモスデニ ナキトモヨリ リルケシシュウニホオヲ ヨセテネムレル
『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3
10257
誤解とけぬままに別れし夜の街粉雪は肩にしみて消えつつ
ゴカイトケヌ ママニワカレシ ヨルノマチ コナユキハカタニ シミテキエツツ
『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3
10258
職のなき妹よ隣りの兒を招びて子守唄など聞かせゐるかも
ショクノナキ イモウトヨトナリノ コヲヨビテ コモリウタナド キカセヰルカモ
『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3
10259
中座して歸る道に仰ぐ星空よ無視されし歎き消ゆべくもなし
チュウザシテ カエルミチニアオグ ホシゾラヨ ムシサレシナゲキ キユベクモナシ
『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3
10260
軒に來てさへづる朝の小鳥らよ昨日のことは忘れむと思ふ
ノキニキテ サヘヅルアサノ コトリラヨ キノウノコトハ ワスレムトオモフ
『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3