目次
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全短歌(歌集等)
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朱扇
寒き灯
バス降りて
對岸の
落し物
色あせし
とげ含む
あさはかに
愚かなる
愚痴めきて
霧深き
若き我には
10262
バス降りて十字路をよぎりくる君よ夕陽の中の我に手擧げて
バスオリテ ジュウジロヲ ヨギリクル キミヨユウヒノナカノ ワレニテアゲテ
『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3
10263
對岸の家にも明るき灯はともる何時までならむかかる平和も
タイガンノ イエニモアカルキ ヒハトモル イツマデナラム カカルヘイワモ
『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3
10264
落し物せしことも頻りにわびしくて襟立てて歩む夕べの街を
オトシモノ セシコトモシキリニ ワビシクテ エリタテテアユム ユウベノマチヲ
『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3
10265
色あせし造花も影をもつ夕べ歸り來て座ればしみじみ寒し
イロアセシ ゾウカモカゲヲ モツユウベ カエリキテスワレバ シミジミサムシ
『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3
10266
とげ含む言葉なりし事も思ひ出づ夕べ歸り來て炭出しにつつ
トゲフクム コトバナリシコトモ オモヒイヅ ユウベカエリキテ スミダシニツツ
『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3
10267
あさはかに振舞ふゆゑか獨り身と思はれ易きことも寂しも
アサハカニ フルマフユヱカ ヒトリミト オモハレヤスキ コトモサビシモ
『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3
10268
愚かなるわが日常のふるまひも寫されゆかむ君の小説に
オロカナル ワガニチジョウノ フルマヒモ ウツサレユカム ミキノショウセツニ
『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3
10269
愚痴めきて輝かぬ言葉のみ吐くを懀しと夫の思ふ日もあらむ
グチメキテ カガヤカヌコトバ ノミハクヲ ニクシトツマノ オモフヒモアラム
『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3
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霧深きロンドンの街をゆける夢さめて寂しも身の冷えてをり
キリフカキ ロンドンノマチヲ ユケルユメ サメテサビシモ ミノヒエテヲリ
『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3
10271
若き我には待つ幸福もあるならむ涙もろくのみなります母よ
ワカキワレニハ マツシアハセモ アルナラム ナミダモロクノミ ナリマスハハヨ
『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3