寒き灯


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バス降りて十字路をよぎりくる君よ夕陽の中の我に手擧げて
バスオリテ ジュウジロヲ ヨギリクル キミヨユウヒノナカノ ワレニテアゲテ

『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3


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對岸の家にも明るき灯はともる何時までならむかかる平和も
タイガンノ イエニモアカルキ ヒハトモル イツマデナラム カカルヘイワモ

『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3


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落し物せしことも頻りにわびしくて襟立てて歩む夕べの街を
オトシモノ セシコトモシキリニ ワビシクテ エリタテテアユム ユウベノマチヲ

『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3


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色あせし造花も影をもつ夕べ歸り來て座ればしみじみ寒し
イロアセシ ゾウカモカゲヲ モツユウベ カエリキテスワレバ シミジミサムシ

『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3


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とげ含む言葉なりし事も思ひ出づ夕べ歸り來て炭出しにつつ
トゲフクム コトバナリシコトモ オモヒイヅ ユウベカエリキテ スミダシニツツ

『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3


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あさはかに振舞ふゆゑか獨り身と思はれ易きことも寂しも
アサハカニ フルマフユヱカ ヒトリミト オモハレヤスキ コトモサビシモ

『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3


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愚かなるわが日常のふるまひも寫されゆかむ君の小説に
オロカナル ワガニチジョウノ フルマヒモ ウツサレユカム ミキノショウセツニ

『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3


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愚痴めきて輝かぬ言葉のみ吐くを懀しと夫の思ふ日もあらむ
グチメキテ カガヤカヌコトバ ノミハクヲ ニクシトツマノ オモフヒモアラム

『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3


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霧深きロンドンの街をゆける夢さめて寂しも身の冷えてをり
キリフカキ ロンドンノマチヲ ユケルユメ サメテサビシモ ミノヒエテヲリ

『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3


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若き我には待つ幸福もあるならむ涙もろくのみなります母よ
ワカキワレニハ マツシアハセモ アルナラム ナミダモロクノミ ナリマスハハヨ

『朱扇』(朱扇社 1951.3) 第3巻3号 p.3