目次
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全短歌(歌集等)
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朱扇
梅雨の晴間
足惡き
修道院に
いつか遠く
寂しき時
霧の中に
歸り來て
何處よりか
長雨の
霧の雨
10307
足惡き友が必死に彫りてゆく胸像に午後の陽ざし及べり
アシワルキ トモガヒッシニ ホリテユク キョウゾウニゴゴノ ヒザシオヨベリ
『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3
10308
修道院に入るとふ噂聞きしまま幾年逢はぬ友も戀ほしも
シュウドウインニ ハイルトフウワサ キキシママ イクトシアハヌ トモモコホシモ
『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3
10309
いつか遠く忘れられゆく身と思ふ又ひとり嫁ぐ教へ子のあり
イツカトオク ワスレラレユク ミトオモフ マタヒトリトツグ オシヘゴノアリ
『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3
10310
寂しき時返事めあてに書くらしき教へ子の手紙憎き日もあり
サビシキトキ ヘンジメアテニ カクラシキ オシヘゴノテガミ ニクキヒモアリ
『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3
10311
霧の中に灯影うるめる街に出づ友病む暗き家をまかりて
キリノナカニ トウエイウルメル マチニイヅ トモヤムクラキ イエヲマカリテ
『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3
10312
歸り來て鳳仙花の苗植ゑに出づ梅雨の晴れ間の土やはらかく
カエリキテ ホウセンカノナエ ウヱニイヅ ツユノハレマノ ツチヤハラカク
『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3
10313
何處よりか迷ひ來し仔犬に童らは寄るいつまでも明るき露地の夕ぐれ
イズコヨリカ マヨヒコシコイヌニ コラハヨル イツマデモアカルキ ロジノユウグレ
『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3
10314
長雨の晴れ間に菊を移植する母の居間より見やすき位置に
ナガアメノ ハレマニキクヲ イショクスル ハハノイマヨリ ミヤスキイチニ
『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3
10315
霧の雨降るとしもなき夕空の何處よりぞ栗の花匂ひくる
キリノアメ フルトシモナキ ユウゾラノ イズコヨリゾクリノ ハナニオヒクル
『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3