九十九里濱小吟


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陽のぬくみのほのかに殘る砂ふみて夜半の渚をひとり歩みぬ
ヒノヌクミノ ホノカニノコル スナフミテ ヨワノナギサヲ ヒトリアユミヌ

『朱扇』(朱扇社 1952.8) 第4巻8号 p.2


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艫の音の夜もすがら絶えぬ河の面よ月も碎けて映りゐるべし
ロノオトノ ヨモスガラタエヌ カワノモヨ ツキモクダケテ ウツリヰルベシ

『朱扇』(朱扇社 1952.8) 第4巻8号 p.2


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陽やけして網をつくらふ乙女らよかかる靑春のあるも思へり
ヒヤケシテ アミヲツクラフ オトメラヨ カカルセイシュンノ アルモオモヘリ

『朱扇』(朱扇社 1952.8) 第4巻8号 p.2


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砂防林の松は一せいに滴落す日照り雨遠く沖に去りつつ
サボウリンノ マツハイッセイニ シズクオトス ヒデリアメトオク オキニサリツツ

『朱扇』(朱扇社 1952.8) 第4巻8号 p.2


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渡し舟を待つと佇む土手のへに濱なすの花の揺れやまぬかも
ワタシブネヲ マツトタタズム ドテノヘニ ハマナスノハナノ ユレヤマヌカモ

『朱扇』(朱扇社 1952.8) 第4巻8号 p.2